劇場公開日 2016年4月16日

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「20作目という記念を賛辞したいが・・・」名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア) 森泉涼一さんの映画レビュー(感想・評価)

3.520作目という記念を賛辞したいが・・・

2016年4月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

コナン映画も早いことで20作品という大台に到達し、毎年欠かさず公開し不動の人気を誇っていることはすごいことだが、記念作品となった本作を称賛することは難しいだろう。
映画では「漆黒の追跡者(チェイサー)」以来の登場となった犯罪組織「黒ずくめの男たち」。コナン映画は終演間際で次回作のポイントとなる部分のヒントを出すのは恒例となっており、今年は黒ずくめが登場することは認知されていたこと。更に20作品目という記念作ともなればコナン映画史上最高のロケットスタートと言われても頷けるが、全ては黒ずくめと記念作に集約されたからの動員であるのも事実。決して映画自体は褒められる内容ではなく無難な作品といえる。
黒ずくめというのになぜ惹き付けられるか。コナンの宿敵でありながら小さくなった真相にも近づけるという楽しみが待ち受けているからであり、大人も楽しめるサスペンスを展開してくれる期待もあるからである。だが、本作は黒ずくめというブランドを利用し、記憶喪失の女に引っ掻き回され推理を忘れてしまった映画にすぎない。この記憶喪失の女は今回のゲスト声優である天海祐希が担当し、肝心のジンやウォッカ達より前面にでしゃばるのは自然な流れかもしれないが、記憶喪失時のわざとらしいアフレコには聞くに堪えない。
何よりも一番物足りないのは、推理をほとんどせずに組織との戦いをメインとし、余った時間で記憶喪失女の手助けに費やしたことである。推理=コナンという定義を崩しては面白味も半減以下になると新たな発見ができたことをプラスに考えるしかない。
早い段階で見えていた特殊な仕掛けで魅了した観覧車の末路も結果的に見れば普通の観覧車へと成り下がり役目を終えた時点でユーモアがない。
散々酷評したが、良かった点もいくつかある。人対人の格闘技戦がコナン映画にしては多く使われており、今のアニメ市場の流れを受け継いでいる感じもするが、ここはスピーディーなアクションとリアリティある対人戦を展開しており見応え十分である。
前述にも述べたが終演付近に次回作のヒントが流れ、本作から推測すると・・・「探偵たちの鎮魂歌(レクイエム)」を彷彿さえてくれそう。だが、次回作からコナンも革命的なことに取り組まなければ同じ結果が待っているだけだと懸念もしてしまう。

森泉涼一