「笑わなくなったあの娘に、笑顔になれる夢を」映画クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
笑わなくなったあの娘に、笑顔になれる夢を
映画クレヨンしんちゃん24作目。
今回のはヤバい…。
マジで良かった!
「逆襲のロボとーちゃん」「オラの引越し物語」も面白かったが、ここ最近の中では間違いなく一番面白かった!
春日部中で同じ夢を見る不思議な現象が。
同時に、父親と共にやって来た陰のある少女サキ。
やがて、楽しかった夢が悪夢となり…。
まず、今回初担当の劇団ひとりの脚本が見事!
「クレヨンしんちゃん」らしいドタバタギャグは勿論、しんのすけらの何気ない日常や描写、かすかべ防衛隊の活躍、家族愛…「クレヨンしんちゃん」の世界をよく知り、あるあるをしっかり踏まえ、何の違和感も無く「クレヨンしんちゃん」の世界を創造。
今回は夢の世界が舞台。前半はコミカルにファンタスティックに、後半はちょいホラー風味の悪夢世界へ立ち向かう。
劇場版は作品ごとに野原一家がメインだったりかすかべ防衛隊がメインだったりだが、今回はバランスよく両者が活躍。
その展開の巧みさは、映画監督や作家としての手腕を奮う。
また、本職がお笑い芸人なので、今回はツッコミやギャグが冴えている。
しんのすけが見る中年エロオヤジみたいな下品な夢に風間くんの呆れたツッコミ「あいつは本当に5歳児なのか?」は個人的に妙にウケたし、“バク”ネタはシュール。
でも、おバカなお笑いや劇場版特有の独創性以上に、根底のテーマに非常に感動させられた。
ネタバレってほどじゃないが、悪夢の原因はサキとその父親。
ある過去の重責で悪夢しか見られなくなったサキを救う為に、父親は開発したマシンで街中から夢を吸い取っていた。
しかし、かすかべ防衛隊と過ごす内、サキは後悔し始める。
その時のしんのすけの台詞…
「オラがサキちゃんの夢をお助けするぞ」
さらりと言ったのだが、これが何だかカッコよく、悪夢からサキを救う為奮闘し、しんのすけやかすかべ防衛隊ら子供の純真さに素直にジ~ンとさせられた。
サキの悪夢の正体は、母親。自分のせいで…と、サキは自分を責め続け、それが悪夢となってサキを苦しめている。
ここで大きな存在となるのが、みさえ。
今回の裏テーマは、“母の愛”。
ひろしは優しいが、みさえは厳しい面もある。
「好きで嫌われ役をやってるんじゃない、子供を守りたいだけ」
子供をちゃんと叱れてこそ、親。
厳しくも優しく、そして深い母親の愛情を、みさえが体現。
我が子の為。
サキの父親の気持ちも分からんでもない。
でも、我が子を思うあまり周囲を巻き込むサキの父親に対し、ひろしとみさえの子供を思う気持ちは純粋。
「私たちだって子供の為なら何だって出来る!」
「親にとって子供は自分以上!」
いつもひとりぼっちで周囲を突き放すサキ。
本当は笑顔が可愛い女の子。
笑わなくなったあの娘に、親の愛情を。笑顔になれる夢を。