時代劇は死なず ちゃんばら美学考のレビュー・感想・評価
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チャンバラよ永遠なれ
DVDで鑑賞。
日本映画・ドラマ固有のジャンル、時代劇の歴史を紐解きながら、「チャンバラ」についての俳優や殺陣師、評論家へのインタビューを交え、その真髄に迫ったドキュメンタリー。
子供の頃から時代劇が大好き。昼間の再放送やゴールデンタイムの本放送を、祖父母と一緒に観ていたのがきっかけだ。
必殺シリーズや「暴れん坊将軍」「遠山の金さん」「桃太郎侍」「長七郎江戸日記」などに触れ、魅力の虜となった。
分かり易い勧善懲悪。テンポ良く進む物語。カッコいいチャンバラ。夢中になって観ていたことを覚えている。
映画好きが高じて昔の時代劇映画も観るようになり、中島監督の「中島貞夫の邦画指定席」も毎週楽しみにしていた。
だが最近では、時代劇は殆ど姿を消してしまった。民放では全くと言っていいほど時代劇ドラマを放送しなくなった。
NHKや時代劇専門チャンネルはコンスタントに新作を製作しているが、映画となっては年に1、2本あればいい方で、全くもって寂しい状況であると言わざるを得ない。
時代劇の素晴らしさを後世に伝えようと試みている本作は、良質なドキュメンタリーなだけでなく、時代劇への愛に溢れた人たちの魂が刻まれた碑のようでとても感動した。
流れるような太刀捌き。華麗な立ち居振る舞い。斬る者斬られる者の矜持と美学。静と動のメリハリ。そこへ至るまでの情感たっぷりの物語。演出者と演者のセンス。…
全ての要素がシンクロすることで初めて成立するものがチャンバラであるならば、それはまさに伝統芸能の世界だ。
チャンバラは日本人の魂の根底にあるものに訴え掛ける、誠の美しさみたいなものを秘めているのではないかと感じる。
長年の間に蓄積され、洗練され、確立されて来た様式美を絶対に廃れさせてはならない。その気概が伝わって来た。
[以降の鑑賞記録]
2024/09/26:DVD
※修正(2024/09/25)
本年最高の映画のひとつ
甘ったるい感傷的ノスタルジーなどでは決してなく、フッテージ引用と専門家たちへのインタビューによって時代劇の本質を掬い上げ、現代に蘇らせんとする考察。そのことは、最後に監督本人による、ちゃんばら短編が挿入されることからも明らか。
掟破りな切り返しショットも含め、語りの軽やかさと歴史の重厚さとの幸福な同居。専門家らが時代劇を語るシーンは、熱も相まってまるで歌のようにも聴こえてくる。"斬られ役がいて殺陣は決まる"との言葉に撮影所時代のプロフェッショナリズムを感じる。最終盤のちゃんばらシーンは福本清三の存在が圧巻。
映画と殺陣を本気で考えてる作品
時代劇、日本の映画のはじまりとこれから、日本人、戦争、、中島監督の言葉がよく理解できました。
戦後、GHQがちゃんばら映画製作を禁止した理由の解釈とか(たしかにそうかもな)って思えて泣けちゃった
立ち回り、という文化
例えば、萬屋錦之介、近衛十四郎、市川雷蔵、大川橋蔵等々、それぞれの殺陣の違いや表現力についての比較が面白い。
ちゃんばら、は、日本特有のコミニュケーション力という説も、なるほど〜、と思えて、目からウロコ。
この平成の時代に、あえて時代劇を撮るカントク方には、ぜひともこれを観て認識を新たにしていただきたい。
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