劇場公開日 2016年12月3日

  • 予告編を見る

「時代劇の真髄…ちゃんばらよ永遠なれ!」時代劇は死なず ちゃんばら美学考 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0時代劇の真髄…ちゃんばらよ永遠なれ!

2021年1月15日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

知的

 DVDで鑑賞。

 中島貞夫監督17年ぶりの映画作品。日本映画・ドラマ固有のジャンル―時代劇の歴史を紐解きながら、“ちゃんばら”についての俳優や殺陣師、評論家へのインタビューを交え、その真髄に迫ったドキュメンタリー。

 子供の頃から時代劇が大好きです。昼間の再放送やゴールデンタイムの本放送を、祖父母と一緒に観ていたことがきっかけです。必殺シリーズや「暴れん坊将軍」、「遠山の金さん」、「桃太郎侍」、「伝七捕物帖」、「長七郎江戸日記」、「銭形平次」などに触れ、その魅力の虜となりました。
 子供にも解り易い勧善懲悪、テンポ良く進んでいくストーリーの面白さ、クライマックスで繰り広げられるちゃんばらのカッコ良さ…夢中になって観ていたことを覚えています。映画好きなのも高じて、昔の時代劇映画も観るようになりましたし、中島監督がKBS京都でやっておられた映画番組「中島貞夫の邦画指定席」も毎週楽しみにしていました。
 ですが最近では、映画からもドラマからも、時代劇は殆ど姿を消してしまいました。民放では全くと言っていいほど時代劇ドラマを放送しなくなりました。NHKや時代劇専門チャンネルはコンスタントに新作を製作していますが、映画となっては年に1、2本大作があればいい方だし、個人的には全くもって寂しい状況だと言わざるを得ません…。

 そんな時代劇の灯を絶やすまいと、時代劇の持つ魅力、ちゃんばらの素晴らしさを後世に伝えようと試みた本作は、良質なドキュメンタリーであるだけでなく、時代劇への愛に溢れた人たちの魂が刻まれた碑のようで、とても感動しました。
 流れるような太刀捌き、華麗な立ち居振る舞い、斬る者斬られる者の矜持と美学、静と動のメリハリ、そこへ至るまでの情感たっぷりな物語、演出者と演者のセンス…全ての要素がシンクロすることで、初めて成立するものがちゃんばら…。まさに伝統芸能の世界。文化遺産だなと思いました。

 ちゃんばらには、日本人の魂の根底にあるものに確実に訴え掛けて来る、誠の美しさがある…。

しゅうへい