劇場公開日 2016年10月8日

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「【”夕食とは皆で食するモノです”と教職40年の父は言った。行き場のない父を温かく迎える血のつながりのない伊藤さんの姿に、善性を感じる作品。今作は派手さはないが、品性ある映画であると私は思います。】」お父さんと伊藤さん NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”夕食とは皆で食するモノです”と教職40年の父は言った。行き場のない父を温かく迎える血のつながりのない伊藤さんの姿に、善性を感じる作品。今作は派手さはないが、品性ある映画であると私は思います。】

2022年7月1日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

■息子夫婦の家を、堅苦しい性格故に自らの意思で家を出た父(藤竜也)は、娘・彩(上野樹里)と20歳年上の彼氏・伊藤さん(リリー・フランキー)が暮らす部屋へやって来る。
 拘りのある性格の父は彩たちの穏やかな日常を一変させるが、3人は少しずつ距離を縮めていく。
 そんなある日、父は置き手紙を残して行方不明になってしまい…。

■私は、タナダユキ監督のファンである。初めて劇場で観たのは「四十九日のレシピ」であった。(今作のパンフは、今でも時折読み返す。)で、「百万円と苦虫女」をレンタルで観て、「ロマンスドール」映画愛に溢れた「浜の朝日の嘘つきどもと」を劇場で鑑賞し、タナダユキ監督の魅力を再確認した。
 今作は、私の居住区では物理的に観れなかったのであるが、配信にて漸く鑑賞出来た作品である。

◆感想

・タナダユキ監督作品に共通していると思うのであるが、登場人物は、皆、何等かの屈託を抱えつつも、善性溢れる人ばかりである。
ー 監督の、人を見る優しき視点が好きである。-

・今作も、魅力的な登場人物が描かれる。
 それは、教職40年の藤竜也さんが演じるややお堅い父”口癖は、・・・ではないかな?”である。
 そして、彩と付き合うことになった年の差20年の男、伊藤さん(リリー・フランキー)である。

・この二人の、血のつながりがないのに、相手を思い遣る気持ちが、何とも心地よいのである。

・お堅い父を訪ねて来る且つての教え子。その名をキチンと覚えている父。
ー お堅い父が、実は生徒たちに慕われていた事が分かるシーンである。-

■ホームセンターで交わす、父と伊藤さんの螺子について、楽しそうに交わす会話も良い。

<父が自ら下した施設に入るという選択肢。
 ”私が居ると、皆に迷惑をかけてしますのではないかな?”という台詞。
 オロオロする血のつながった家族の姿と対比した、その言葉を許容する伊藤さんの姿。
 今作は、派手さはないが、品性ある映画であると私は思います。>

NOBU