「ささやかだけど、大切なもの」お父さんと伊藤さん ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
ささやかだけど、大切なもの
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親子ってどう考えても厄介で、お互いのこと、嫌というほど知ってるつもりなのに、改めて向き合うと実はなんにも知らないことに愕然となる。過去にいろんな忘れ物をしてきた人はきっとなおさらだ。本作の父、娘、息子のように。
タナダユキ監督はそんな家族を糾弾するでもなく、リリーさん演じる“伊藤さん”のような緩やかな視点で珍騒動を見守る。伊藤さんが佇んでいるだけで、彼が自然体で一言放つだけで、お父さんへの処方箋みたくスクリーンがほっこり安定する。でもそれに甘えて問題を先延ばしにする面々に彼が放つ一言もピシャリと重い。
複雑になりすぎた家族の方程式の果てに、ごくシンプルに浮かび上がっていく互いの“気持ち”。炎を冷ますように落ちる雨粒。そして走り出すヒロイン。彼女が父を全力で追い求めたのはおそらく人生で初めてだったのではないか。ともあれ、目を閉じると伊藤さんの微笑ばかりが浮かんでくるのは何故だろう。
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