「家族の煩わしさと愛おしさ」お父さんと伊藤さん kikitさんの映画レビュー(感想・評価)
家族の煩わしさと愛おしさ
『百万円と苦虫女』、『ふがいない僕は空を見た』、
『ロマンス』のタナダユキ監督による最新作。
タナダ監督の映画の主人公は、どの作品も愛おしい。
自分の人生の限界をどこかうすうす気づいていて、
自分たちなりの幸せを、静かに掴もうとしている。
今回の上野樹里演じる彩もそうだ。
20歳年上の彼氏・伊藤さんと、
結婚するわけでもなく、将来について真面目に語り合うわけでもなく、でもお互い、ちょうどよい距離間の日常を重ねている。
そこに突然、お父さんが転がり込んできて、
あれよ、あれよ2DKのアパートを舞台に共同生活が展開していく。
30もすぎた娘にとって、お父さんの存在は、ムズカシイ。
明らかに年老いたお父さんの姿を、
真正面から優しく受け入れることも、完全に突き放すわけにはいかないことは分かっている。
互いに素直になれない娘と父の間に、
「伊藤さん」は心地よく介入し、
3人の関係は、今までどんな名作も語らなかった
新しい”家族のかたち”を描いていく。
お父さんにとって伊藤さんは、友人のようであり、
彩にとっては、あるで母のような安心感を与えてくれた
人なんだろう。
家族の煩わしさも愛おしく変えてくれる、
魔法のような作品に出会った。
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