劇場公開日 2016年11月5日

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「山戸結希の惜しさがにじむ作品、胃もたれする危なっかしい恋の行方」溺れるナイフ たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0山戸結希の惜しさがにじむ作品、胃もたれする危なっかしい恋の行方

2021年4月18日
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鑑賞方法:VOD

怖い

知的

難しい

山戸結希作品は『ホットギミック』以外あんまり刺さっていない。今作も期待しすぎたのか、胃もたれした。味付けしすぎなんだと思う。劇的に描こうとしすぎて、こっちが溺れた感じ。

『21世紀の女の子』を観てから、山戸結希が少女マンガ原作を監督するのは、ある種、才能の搾取だと思っている。彼女が引き出す「女の子」はいつだって聖域にいて、時折、危ない雰囲気を存分に醸し出す。ただ、漫画原作となると、それが伝えたい範疇を超えないようにセーブされている気がするからだ。今作も走ってはいるものの、どこと無く伝わってこない。パンチは来るけどポカンとする。やはりこの人はオリジナルを描くべきではないか。
中学生編はキラキラと輝き、劇的な出会いと衝動をこちらにも浴びせる。破られることのない世界と、程良い拙さが光る。一方の高校生編は、役者以外あまり褒められるところはないと思う。カナも大友も大人になっていて、夏芽の心だけ冷え切ったような綻びを感じる。そうした香りが役者から放たれているのは良いのだが、関係性の清算と再出発が提示されたとはあまり思えない。寧ろこじれてないか。序盤に感じたセンセーショナルなカメラワークもうるさく思えて、音楽もムーラボかってくらい流す。コレでもかと入れるのでなかなか見にくかった。そういう意味では、『ホットギミック』がかなり改善されていたと思う。

もちろん、彼女のセンスは群を抜いているし、今後おもしろい作品をバンバン出していくんだろうとは思う。ただ、今作が称えられるほどの作品ではない。ちょっとバランスと配分が違っていたらまた評価が変わる気がする。

たいよーさん。