劇場公開日 2016年6月18日

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「恐怖は日常のすぐ隣」葛城事件 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0恐怖は日常のすぐ隣

2023年11月7日
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鑑賞方法:DVD/BD

だいたいどんな時も旦那と一緒に晩御飯を食べながら、やいのやいのと楽しく映画を観ているのだが、「葛城事件」は違った。
画面に映し出される葛城家の不気味な不協和音に、心の底からこみ上げてくる言い様のない不安。

ついさっき食べ終わった今日のご飯。なんてことのない野菜炒め、ご飯、味噌汁、昨日の残りの煮物。そういうありふれた「普通のご飯」はただの一度も登場しなかった。
それだけで、この家庭が「普通なんかじゃ決してないんだ」と雄弁に物語っている。

その一方で、彼ら個人は世間からそこまで逸脱したような人物でもない。よくいる偉そうな親父、よくいる天然ボケなオカン、よくいる気弱な兄貴、よくいる引きこもりの弟。
その「大したことない人々」感が、いつか自分の家族も葛城家のようになるのではないか?と思わせる。
怖すぎて思わず旦那にすり寄りたくなるほどに。

「俺が一体、何をした」というコピーに対して、むしろ親父は「何をしなかったのか」を描いているようだ。
それは「相手を思いやること」だったんじゃないかと思う。いつでも自分のベストを重んじて、嫁が、息子がどう感じるかは二の次。
それは血縁の上に胡座をかいた怠慢であり、甘えなんじゃないだろうか。

彼の罪は彼が精算するしかない。彼が考える、最も厳しい方法で。

とりあえず、葛城家のようにならないように、まずは旦那を思いやろう。

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つとみ