劇場公開日 2018年2月3日

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「困難が待ち構えていようが『本物』になりたいのか、無難に『普通』のままで生きていくのか」アバウト・レイ 16歳の決断 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5困難が待ち構えていようが『本物』になりたいのか、無難に『普通』のままで生きていくのか

2018年2月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

レイは、「男の子」になりたいんだよね。みんなからも男として認めてもらいたい。だから、心身ともに『本物』の男の子に早くなりたいと願っている。まるでレイの心は、たっぷりと水をたたえたガラス鉢のように、透明さ、ピュアさ、と一緒に、割れやすい危なっかしさが同居している。
母親マギーは、そんなレイを理解しつつも、ホルモン療法を受けるための親の承諾書にサインすることを、この期に及んで迷っている。ほんとにそれがレイのためなにか?と。あとで後悔したりしないかと。『普通』の女の子のままではいけないのかと。
ふたりの葛藤が、痛々しくも狂おしく、親子として認めあっているからこそ応援しつつぶつかり合う。
同居する祖母は、レズでパートナーも一緒に住んでいるのだが、この二人の関わり方の距離感が、どれほどレイとマギーを助けていることか。それぞれの「男の子になりたいレイ」への愛が溢れていた。また穏やかな音楽にも救われた。
マギーには過去に過ちがあったが、いくつもの障害を乗り越えて、みんなで食事をする場面には、今の現実を受け入れる寛容な心を持ち合わせた人たちの優しさで満たされていた。

栗太郎