劇場公開日 2017年4月15日

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「しらけてしまった。」人生タクシー ぷー子の感動が冷めるまえに、映画感想さんの映画レビュー(感想・評価)

1.5しらけてしまった。

2017年3月15日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

2015年のベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞したドキュ・フィクション作品。
正直言ってぷー子はこの作品を受け入れられなかった。
映画を観ていてしらけてしまった。

タクシーの運転手に扮装したジャファル・パナヒ監督がイランの街、テヘランを運転しながらその時々に乗せていく乗客の騒動を描いた作品。だけどね、その騒ぎや事件がぜんぜん面白くないの。パナヒ監督はこの映画をドキュメンタリーと言っているけれど、これはいま流行りのドキュ・フィクションだね。というか、もう完全なフィクション。ドキュメンタリー風に撮影しているけれど、すべてのシーンが演出された作り話だと感じた。そんで、フィクションの作り話だったら、映画のなかの騒動や事件がもっと面白くてもいいんじゃないの、ってぷー子は思ったの。

「人生タクシー」の作品のなかで監督は、イラン政府から受けている圧力や映画センサーシップ(検閲)のことなども描いていて、それはそれで驚きがあって興味深かった。監督本人も2010年から6年間の自宅監禁を受けている身なんだよね。その理由で、金賞を受賞したにもかかわらずベルリン映画祭に来ていなかった。来られなかった。彼の代わりにパナヒ監督の姪っ子や親戚の方が賞を受け取りに来ていた(ぷー子はこの映画をベルリン国際映画祭で観たので確かな情報です♪)。

だけれどね、そんな自宅監禁の身にある人が扮装しているとは言っても、簡単にちょろちょろと街に出て映画撮影することができるのだろうかとぷー子は疑問を抱いちゃった。パナヒ監督は20年間の映画監督禁止令も受けている身なので見つかったら大変なことだよ。国際映画祭ではそんな彼の勇敢な行動をふまえたうえで賞を与えているんだけどね。でもこの映画「人生タクシー」を観ていたら、なんだかそのパナヒ監督の置かれている過酷な立場までもがなんだか嘘くさく感じられてしまった。

撮影した映像ファイル(いまはテラバイトを使ってデジタルで映画撮影するので、ファイルは小さなチップなの)は、ケーキのなかに隠してイランから持ち出したと監督本人は言っているけれど、そんなに簡単に持ち出せるものなの? とぷー子はまたここで首をかしげる。6年間の自宅監禁に、20年間の映画監督禁止令も受けている。しかも自宅監禁は、監督だけじゃなくて奥様や娘さん、彼の身近な友人たちもひっくるめてらしいの。そんな監視下に置かれている監督が、タクシー運転手に扮装し映画制作したり、映像ファイルをイランからこっそり持ち出したりできるのだろうか? 映画「人生タクシー」のお話も嘘くさいし、そんな嘘くさい作品を観せられたら彼の置かれた状況までも嘘くさく感じられてしまうのはぷー子だけだろうか? パナヒ監督が映画のなかで描いているイラン政府からの圧力やセンサーシップの意味がなんだか薄れてしまうような気がした。

ベルリン国際映画祭は政治的なものをあつかった作品に賞がいきやすいの。またパナヒ監督は、ベルリン映画祭のアイドル的な存在だからね。だからこの映画祭でパナヒ監督の作品「人生タクシー」が金賞を受賞したと聞いても、ふーん、って感じてしまうぷー子でした。

ぷー子の感動が冷めるまえに、映画感想