「否定派もまたファンなり」無限の住人 うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)
否定派もまたファンなり
あらためて、物語としての『無限の住人』の弱さを思い知りました。
決定的にダメなのは、主人公の万次と凛の絆の弱さ。
潔癖症で正義感の強い凛と、現実主義で必要悪の万次のキャラクターの対比こそが、この作品のテーマで、彼らが行動を共にする動機を浮き彫りにすることこそが最も重要視されるべきだったのに、なぜかチャンバラ・アクションにフォーカスしてストーリーが進行していきます。
次から次に登場する敵たちも、これでもかと万次を苦しめていきますが、動機が弱い。例えば、主人公に恨みを持つとか、幕府から巨額の懸賞金をかけられたとか、いろいろあるのでしょうが、ほとんど語られません。
キャラクターの魅力も乏しく、奇抜な衣装や、進化した肉体という異形のひしめくビジュアルをもう少しリアルにするか、いっそぶっ飛んだ原作無視に振り切るかのどっちかにしてほしかった。
この映画で評価できるのは、前後編に分けなかったこと。おそらく素材は十分に撮影されていたでしょうが、一本にスッキリとまとめた。そして続編の可能性も消した。偉い!!
俳優の演技は誰もが一本調子で深みも、うまさもありません。海老蔵も市原隼人も栗山千明も全滅。脚本がぜんぜん良くない。
そんな中、意外に光ったのが天津影久を好演した福士蒼汰です。木村拓哉の存在に負けてなかった。
杉咲花と、戸田恵梨香はひどかった。
メソッド的アプローチ(肉体をキャラクタに寄せる)を標榜しないのか、あんなヒョロヒョロで、300人斬りの現場に居合わせたら、普通無事では済まないでしょう。
特に、杉咲。キャリアが浅いのか、事務所のごり押しキャスティングなのか、実力ある新人がごろごろいるのに、なぜ彼女なのか、キムタクとの相性も良くないようですし、彼女の過呼吸、噛み噛みヒステリックなセリフには、良く吠えるスピッツを連想しました。
高倉健と、薬師丸ひろ子の化学反応をよく勉強して撮影に挑んで欲しかった。
レビューには、両極端。おそらくステマの礼讃3行五ツ星コメントと、アンチ・キムタクのこれでもかクソ書き込みが目立ちますが、映画としては普通。
本当に普通のチャンバラ・アクション映画です。
