「中途半端になってしまった惜しい作品」無限の住人 Tohnaさんの映画レビュー(感想・評価)
中途半端になってしまった惜しい作品
原作は未読です。
自宅でブルーレイにて鑑賞。
冒頭の白黒演出で時代感と映画の空気感、物語の始まりを直感的に理解できた為、序盤はとても引き込まれた。
しかし、色がついた後の物語が雑に感じてしまった事もあり、最終的にはやや冷めた状態で鑑賞を終了した。
雑に感じた主な理由の1つは、戦いの意義が感じられなかったことがあげられる。
万次が凛の敵討ちを手助けしているのは分かるが、新キャラが続々出て来てそいつらを不死の力を使って倒して行く。シチュエーションは違うのだが活かしきれていない為、作品の中でマンネリを感じてしまう。
長剣や薙刀を屋内や柱の様な障害物がある場所で使う際に、引っかかってしまい苦手分野である事は頻繁に使われる特性だが、この映画はその点も分かり難い描写になってしまい、戦い毎の印象が薄い。
キャラのアップばかりになり戦場の情景が分からないこともあり、キャラが上手く戦場を活用した感じがしなかった。
沼、不死対決、家屋、山道といったシチュエーションで、上述の記憶に残らない戦いが何度か起こる。しかし、戦いの数が多ければ思い入れのなさをカバー出来るか、と言われたら無理である。更に敵を頻繁に変えていく為、敵キャラへの思い入れは勿論ほとんど無い。故に、戦いが盛り上がりに欠け、増々記憶に残らない。
しかし、戦いにおいて良い点もあった。それは上述したが、シチュエーション自体は豊富であること。そして様々な武器が登場することである。
見覚えのない異国の武器や薙刀、手裏剣、鎖鎌といった具合に多様な武器が登場する。キャラの特徴になり、純粋に見ていてワクワクした。
また、キムタクの万次は期待以上にハマっていて、とても自然だった。左右どちらかに体重がかかってるユラリとした立ち姿は、痛みを感じる不死者らしく大好きです。
戦いに関しては、場面やキャラを絞るなり、戦いの構成を工夫するなり、より良くなった様に思う為、勿体無いと感じます。
血しぶきやバッサバッサ切り伏せる一対多の戦いは痛快で好きなだけにのめり込めないことが悔やまれる。
また、物語も広げ過ぎている節が否めなかった。万次vs逸刀流、逸刀流vs幕府1、万次vs幕府2、とまあ色々あり頭が追い付かない。特に、逸刀流vs幕府1は「誰?」となってしまった。
その他、万次と凛の会話にリアリティを感じられず、最後のやりとりは正直冷めてしまった。そもそも、凛が出ていったことも何如せん腑に落ちないので、やはり物語の詰めも甘い様に思う。
あまり言いたくないが、漫画原作の場合「原作の要素(敵軍団、台詞、シチュエーションなど)を無理に取り入れようとして、露骨になってしまったのではないか」と勘ぐられないよう注意しなければならないと、強く感じる作品だった。
作品の時間も約2:20と長いが、もっと詰められたと感じます。
以上を踏まえ、あまり物語を重視せず、百人斬りと多様な武器が飛び交う様を観たい方にはオススメできる映画だと思う。
鑑賞前は某アメコミ作品の様な超回復能力持ちだと思ってたのですが、「死ねない(ギリギリで生かされてしまう)」って感じでした。個人的には嫌いじゃないですが、爽快に出来すぎず、緊張感も出しづらい、扱いが難しい代物に感じました。
>守銭奴さん
コメントありがとうございます。
個人的に法で禁じられているものの、行動を起こす人の感情に共感できる「仇討ち」を物語に据えている作品はとても興味深いので、是非、原作全30巻を読んでみたいと考えております。
メインキャラですら考えを把握出来なかったので、その点も楽しみです。
私は原作読んでるんですが、非常に共感させられるレビューにうなってしまいましたよ。
あんまり原作既読未読って関係ないみたいですねえ、特にこの映画
洞察力のある人は見抜いてしまう。
戦いの意義についてですが、これは原作では最後まで通して描かれたテーマで
個人的見解ですが
皆がそれについて悩んでるという感じ、もっとも万次は単に人斬りが好きという印象だが、それでも凛の仇討ちの正統性に悩む。
ぜひ原作お読みいただきたいですが…よろしければ