劇場公開日 2016年5月7日

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「140分間の感情のダイナミズムを生々しく描写」ヴィクトリア(2015) ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0140分間の感情のダイナミズムを生々しく描写

2016年12月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

はじめ、作り手たちがキャストに手渡したのは、たった12ページの台本だったという。そこには大まかな筋書きと動線は書かれているものの、具体的なセリフはほとんどなし。あとは140分間ノンストップの一発撮り。つまり、ほとんど即興に近い形でセリフが発せられ、克明に映しとられる俳優たちの表情、互いに惹かれ合う想い、そこからの急転直下、おびただしい汗や緊張を放出させながらの逃避行に至るまで、まさに全身全霊の演技が活写されていったことになる。

とはいえ、長回しは目的ではなく手段に過ぎない。それを活用し、140分間、超スピードで流動していく感情のダイナミズムを最もリアルかつ生々しいものとして抽出し得たからこそ、世界はこの作品に沸いたのだ。この途方もない実験精神、役者陣の反射神経、スタッフワークの連携。一つでもピースが欠ければすぐに瓦解し、野心だけがやみくもに大きい駄作に成り下がっていたことは明白。成立したのが奇跡、そう表現できる数少ない作品である。

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牛津厚信