「旅立ちの時の周囲のぬくもりが心地よい余韻を残す」スプリング、ハズ、カム ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
旅立ちの時の周囲のぬくもりが心地よい余韻を残す
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胸の中を爽やかな風が吹き抜けた。自分が初めて上京した時、どんな気持ちだっただろうかと、重ね合わせて懐かしくなった。親元を離れるヒロインのみならず、誰にでも旅立ちの時は訪れる。そんな姿に一言、「がんばれ」と、いろんな立ち位置から声をかけずにいられない出演者たちの、さりげない演技や個性がとても素敵に輝く作品だ。
また、物語を彩るエピソードの数々が、ささやかではあるが思いがけないものばかりで、日常の魔法として心地よく響いてくる。広島弁の温かみが全編に溢れ出しているのも魅力の一つ。声や言葉のリズムに思わず引き込まれてしまうし、その温もりがいつまでも胸に留まり続ける。
時折、ヒロインは部屋で独り言をつぶやく。あくまで私見に過ぎないが、彼女はもしかすると亡くなった母親に宛てて自分の気持ちを報告していたのではないかと、ふと思った。そうやって彼女はこの先、父親と同じくらい母のことを思いながら、一人暮らしの一歩を踏みしめていくのかもしれない。
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