劇場公開日 2016年12月17日

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「ラストに救われた?私達はこの事実に、徹底的に打ちのめされるべきだったと思います。」ヒトラーの忘れもの さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ラストに救われた?私達はこの事実に、徹底的に打ちのめされるべきだったと思います。

2017年2月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ちょっと前に、やっと観ました。

『ヒトラーの忘れもの(2015)』
原題  Under sandet

(あらすじ)
第二次世界大戦後のデンマークの浜辺には、ドイツが埋めた200万個以上の地雷が残っていました。その地雷を撤去したのは、強制的に連れてこられた、10代のまだ幼さの残るドイツ人兵でした。
※注 絶賛コメントではありません。

まず、なぜここに地雷が残ったのか?ですが。
ノルマンディー作戦は、ご存知ですよね?
ドイツ的には、連合軍はこのデンマークの浜辺から上陸すると考えていたのです。
しかしまんまとフランスのノルマンディーから上陸されたので、そのまま地雷が残ってしまったという訳なんです。
そして本作の元になった残酷な歴史は、デンマークでもあまり知られていないようですね。

劇中くりかえし、「ナチがしたことを忘れるな」という台詞が出てきます。
"ナチがしたこと"を、1つ間違えばふき飛ぶ地雷撤去でドイツの子供達が償うんです。
その命をもって。
この子供達を監視する役目が、ラスムスン軍曹(ローラン・モラー)。
最初は罵声を浴びせ、食事も与えず、人として扱わなかったラスムスンも、地雷で亡くなる少年の最期を見て、また真っ直ぐな目をした賢い少年セバスチャン(ルイス・ホフマン)と接するうち、考えを変えていきます。
犬一匹と暮らすラスムスンの背景は全く語られませんが、セバスチャンと語り合う姿に父親の横顔を見ました。
ま、色々とあったんでしょうね。

映画を観ていて、悲鳴を上げたのは初めてです!
またスクリーンを直視できなかったのも、初めてです。
それほどまでに、子供達が地雷を撤去する姿は息苦しかった。
緊迫感。ハンパないです。
でも正直、それだけの映画になってしまっているようにも思えました。
この点は、後半語ります。
この映画を観なければ、ずっと知り得なかったデンマークの残酷な歴史。
そういった点では、観る価値は多いにあると思います。










しかし。

(絶賛コメントが多いので書くのどうしようかなと思ったんですが)

本作を観た場合、私はエンタメ作品だなって思ったんですよ。
なんでそう思うかというと、それはラストにあります。
エンタメ作品っていうのは、ラストに辿り着くまでに紆余曲折あっても、最終的にみなが分かりやすい、王道の結論(平凡なラスト)に辿り着くもんです。
本作の場合、憎しみからは何も生まれない。
互い許し合おう。
そこに、希望が!だと思うんです。
分かりやすいです!
だから、エンタメです。
あ、エンタメが良い悪いって話ではないです。
合計14人の子供達、ほぼ素人さんを使ってるんですよね?
そんなリアルな演技をする子供が、地雷で(両腕とか)吹き飛ぶ!
この出来事を、エンタメ的な着地にして良いものか。
いや、しちゃいけないことって、絶対にあると思うんですよね。
ここ、凄く違和感がありましたね。
製作者側の姿勢に、いやらしさを感じてしまったんです。
それはきっと、私が捻くれてるせいでしょう。
すみません。

あと、ラスムスンと各子供達が心を通わせるエピソード&心理描写があまりにもテンプレ過ぎます。
コストがかかってなさすぎる。
子供が爆死するとこには、コストがかかってるのに。
多感な時期の少年達が、神経すり減らして日々生きているんですよね?
もっと心の機微を、丁寧に描いて欲しかった。

あと、こんな残酷な出来事があったんですよ!
以外にも、「手紙は憶えている」のテーマの1つように、当事者はいないけれども、その子供達、その孫達が、悲しい歴史を背負って対戦国とどう関わるのか。
という今後の我々の課題が見えるラストであれば、良かったのに。

最後に。
いつもの邦題問題です。
劇中、ヒトラーは出てきません(笑)
デンマークの原題はUnder sandet=砂浜の下。
英語タイトルはLand of mine=地雷の土地。
この英語タイトル、個人的には秀逸だと思います。
"地雷の土地"とも言えるし、"私の土地(デンマークでありドイツ)とも読める。

※2015年東京国際映画祭では、"地雷と少年"だったらしいです。そしてラストに救われたという感想が多くてびっくりです。あんなこと、実際はなかったのに。多くの子供達が救われなかったのに。私達はこの事実に、徹底的に打ちのめされるべきだったと思います。

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夏斗