「原題:SICARIO、邦題:ボーダーライン(境界線)。日本人向けの邦題が秀逸。」ボーダーライン(2015) アルさんの映画レビュー(感想・評価)
原題:SICARIO、邦題:ボーダーライン(境界線)。日本人向けの邦題が秀逸。
エミリー・ブラント演じる主人公ケイトの視点で、全てを知らされないまま麻薬組織壊滅作戦は進んでいく。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が意図的に作戦内容を伏せたまま、脚本家テイラー・シェリダンの名作サスペンス【ウィンド・リバー】の様に鑑賞者にそれぞれの”境界線”を引かせる作りはさすが。
その”境界線”とは何か。何に対しての”境界線”と感じるかは多分様々で、法であったり、倫理であったり、国境であったり、チーム内の役割であったり、、、住む世界であったり。
自分の生活していた現実。理想として思い描いていた現実、全く想像もしていなかった別世界の現実。だが全てが線引きされており、その境界線は見る事も実感する事も無かった。動揺と焦り、突然突きつけられる恐怖を、エミリー・ブラントが見事に好演。何より、ベニチオ・デル・トロ演じるアレハンドロが、目で素晴らしい演技を魅せてくれた。
重低音を多用する事で緊迫感を増す音響、無駄なアクションは無くし銃撃戦に特化、敢えて空撮という手法をとった演出、リアルを追求した潜入時のシーン、重苦しさなどはドキュメンタリーかと思う素晴らしさ。
全体的に難しく、理解に時間がかかるが、大人の娯楽としてオススメの作品。
原題の【SICARIO】はスペイン語。もともとはラテン語の意味が由来らしい。本来の【SICARIO】の意味は、知らないまま鑑賞した方が、ラスト30分の展開により緊張感が出る。
邦題:本作を総括的に見て付けられたタイトル。
原題:ある特定の人物にフォーカスを当てて付けられたタイトル。
是非、鑑賞後に意味を調べてみて改めて考察して楽しんで頂きたい。