「「東京物語」を想起させるような家族の日常の世界が素晴らしい!」愛しき人生のつくりかた Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
「東京物語」を想起させるような家族の日常の世界が素晴らしい!
物語はこの映画のヒロインであるおばあちゃんマドレーヌが、人生を共にした最愛の夫を亡くし、その夫の葬儀のシーンから始まる。そして、葬式に遅刻してきたマドレーヌの孫息子とこのおばあちゃんとの心の交流を軸に物語は紡がれていく。
この作品では、年老いた独居の親の介護をどうするのか?そしてマドレーヌの息子は丁度定年を迎え、仕事が無くなった今、家に入り浸りで、熟年夫婦特有の新たな結婚生活の変化に因る危機を迎える、更に孫息子のロマンは作家志望のフリーターで、彼女無しで、将来の心配もしないでいる彼を心配する両親達やマドレーヌ。
この3世代に渡る家族のそれぞれの価値観の相違、生きて来た時代も異なり環境も異なる為に、誤解を解かなければならない事もある、このフランス家族の絆の物語はどこへと向かうのか?
その辺りが日本の事情とシンクロする部分と明らかに異なる部分もあって、フランスの家庭事情がとても自然に描かれるハートウォーミングなストーリー。観ていて自然とこちらにも心地良さが伝わる素敵な作品だった!
時に笑いと涙有りだけれども、お国が違っていても基本的にはやはり人間の愛は変わらないと言う非常に気持ちが暖かくなるホッコッリと安堵する映画だったのは言うまでも有りません。
誰の日常にも起こり得る家族問題の数々。でもそんな問題を一つずつ丁寧に家族が協力して解決へと努めるその姿を観るのは、丁度小津監督作品を観ているようで心地良い。
私達の生活の身近に起きる出来事を通して、人間の一生の短い時の中で探す、本当に大切な人生の瞬間、時間とは何か?と言う監督の人間愛に満ち溢れた暖かい目線の優しい物語。映画が紡ぎ出していくこの時間は実に素晴らしい!
少し出来過ぎている感じもしないでもないが、こう言う穏やかな映画を観る機会が有るもの素晴らしいものだ。
やや単調ではあるけれど、こう言う作品を静かに鑑賞する事こそ、最高の贅沢なのだと思う!
この作品景色も綺麗だし、観ていて幸せになれるようなエレガントな作品なのに、邦題が、ハリウッドのラブコメに付けられるような陳腐なハウツー本のようなタイトルでなかったら、もっと多くの人が観たと思う。何か残念にならないなぁ~