トトとふたりの姉のレビュー・感想・評価
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貧困の連鎖の現実の哀しさ
希望ある子どもに襲いかかる周りの環境
それはその子供の親の代から続く貧困の連鎖の結果
その現実は抜け出すのがいかに難しいか、最後のシーンで目の当たりにする
教育を受ける機会を失った子供が親になり、その親子関係が子供に悪影響を与える連鎖は、そう簡単に断ち切れるほど甘くない現実を見せられる。
なんという逞しさ
冒頭で部屋にコンクリートブロックを運び、石を削り針金を巻いて電子コンロを自作するシーンだけで、この姉弟の凄まじい境遇がうかがえる。
本当にドキュメンタリー映画なのか?と疑いたくなるほどの被写体との親密性。カメラは姉弟のもう1人の家族のように寄り添い、残酷さとほんの少しの希望を映し出す。
次女のカメラがさらに効果的
トトがヒップホップダンスに初めて出会う瞬間、カメラは自然にフレームを下げ、リズムを取る彼の手を写す。ここから映画の温度がグッと上がり始める。監督が渡したカメラで、ダンスクラブの選抜グループに選ばれ踊るトトを撮影する次女。この横からのショットがどうしようもなく愛しい。
●作品なのか、メッセージなのか。想像力が試される。
東欧、ルーマニア。貧困のリアル。生まれた場所で人生が決まる厳しい現実。大人にまみれてヤク中になるアナ。施設に駆け込むアンドレア。14歳で親と離れるという決意。アナのその後。頭ではわかる。しかし、わかったつもりになるのは、おこがましい。
撮影手法や目線など、テクニカルな評価はその通りなのだが、それ以上に、この現実に打ちのめされる。圧倒的な現実に。たしかにトトはダンスに、アンドレアはカメラに、人生の希望を見出す。しかし、それはいつ切れてもおかしくない糸のような不確かな希望だ。百歩譲って、ふたりは蜘蛛の糸を登れるかもしれないが、現実にはその他大勢の救われない人たちがいる。
それを、公式サイトでヒップホップの第一人者にコメント求める愚の骨頂。そろそろ映画業界も、ちゃんと考えた方がいい。
ラストが切ない。いつか成長したトトがこれを見たら、彼はどう思うだろうかと想像すると、すこし胸が苦しくなった。
難しいところだ。ドキュメンタリー映画として僕らはこの現実を考える機会を得たけど、倫理的にはどうなんだろとか。だからこそ、この現実をきちんと理解しようとすること、まずは知る努力をすることが大切だと思う。ここまでではないが、日本でも貧困にあえぐ子供たちがいるのだから。
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