「Write up the NEW scenario」デスノート Light up the NEW world 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
Write up the NEW scenario
原作マンガは最終巻まで読んでいたのだが、実写映画版
については本作公開前に「映画版の続編だから予習しと
かないとついていけないかも」と感じて慌てて初鑑賞。
(今まで観ていなかった理由は長くなるので省略。
予想よりもずっと巧みで面白かったというのが結論。)
で、今回の新作である。
先日の『アイ アム ア ヒーロー』がずば抜けていた佐藤信介
監督の新作ということもあり楽しみにしてました。けれど。
いやね、大作感というかかっちょ良く撮れてる映像や
それに見合ったテンションは良いと思うんですよ。
良い役者さんも揃ってるし、死神のCGもかなり精緻。
最初の30分くらいは色々と期待させてくれるし、
ミサや松田の最期に少し切なくなったり、終盤
サプライズもあったり、最後まで飽きずに観る事は出来た。
だけどそれ以上に、残念な点や無理のある点が多過ぎる。
* * *
まずハッキングという“逃げ口上”で何でもアリにしちゃう脚本が難。
サイバーテロリスト・紫苑のアジトへ突入するシーンで、
どうやって主人公達を欺いたのかが説明されなかったり、
監視カメラの乗っ取りやジャマーでの電波妨害を
さも普通の出来事のように扱ったり、あとは対策室の
サーバーがダウンするシーンも「松田と課長以外は
顔バレしてないはずなのに誰を操れたのか?」と疑問符。
ハッキングの達人ならどれもこれも出来て当たり前ってこと?
違うんよ。こっちはデジタルツール合戦なんて
期待してないんよ。アナログな頭脳戦を見たいんよ。
電子機器でなんでもござれなら伏線も何も要らない訳で、
そんなのはサスペンスとしてはひとつも面白くない訳で。
しかもそれらサイバー描写にリアリティがあればまだしも、
解析と呼ぶにはお粗末すぎるあの隠しメッセージ
の出方とか、物凄く分かり易い場所に置かれた
物凄くデカいジャマ―とかに思わず失笑。
* * *
その他、ツッコミ所や不明点を箇条書きで列挙。
(実はもっとあるが長くなるので主要点だけ)
・冒頭あれだけ顔を隠すことを徹底してたのに一番危険な
場面で顔さらしっぱなしという無謀すぎるメンバー。
・お互いの本名も過去も知らない点は徹底しているのに、
新Lの自宅の位置を三島が把握していたのは何故。
そこは一番他人に明かさないようにしなきゃ危ないんじゃ。
そうでなくても新Lはノート持ってるんだから最警戒せな。
・夜神月が万が一に備えて息子を残していたって設定自体に
無理がある。前作を観てる限り、そんなヒマいつあったの。
後見人ミカミも恐らく原作のキラ崇拝者・魅上の
ポジションだろうが、これまたいつスカウトしたん。
・夜神月の思い出の場所って何?
利用するだけの立場だったミサに教えていたのも妙だし
最悪それをアリとしても、三島と新Lはどうやって辿り着いた?
・新Lは自分が死ねない事を知らなかったのに、ミサに「即死」
と書かれたタイミングで死んだフリをしたことになる。
* * *
キラの真の後継者が明かされるドンデン返しには「おおっ!!」
と思ったが、すぐに「あれ待て待ておかしくね?」と再考。
たぶん三島は自分の編集したメッセージで紫苑が動き出し、
キラ対策班と新Lが協力して全ノートを奪取できるまでの
タイミングを予測した上で新Lの名前と死亡時刻を
ノートに書き込んでいたんだろうと思う。
だがそれを予測するのは新Lがノート所有者である
ことを前もって知っていなければ難しいはずだし、
そもそも新Lのノートを奪う絶好のタイミングで、
逆に新Lを生かした事に何のメリットがあったのか?
全ノート奪取が目的なら特殊部隊の襲撃は想定外
だろうし、まさか自分の正体を知りつつ新Lが協力
してくれるなんて考えるワケ無いし……。
結局、三島にとってどこまでが想定内で、
どこまでが想定外だったのかがよく分からない。
* * *
ううううむ、今回ツッコミだけで1700字近くです。
先にも書いた通り、映像的には格好良いんだけどねえ。
役者や映像を観る分には良し。シナリオについては不満タラタラ。
レビュータイトル通り、新しいシナリオ書いて欲しい。
イマイチの2.5判定で。
<2016.10.29鑑賞>