「トランスジェンダーについて考えさせられる。。」リリーのすべて ゆめさんの映画レビュー(感想・評価)
トランスジェンダーについて考えさせられる。。
観た後に調べたところでは、世界で初めて性適合手術を受けた方の実話が元になっていたのね。
色んな視点・目線で観ることができる作品だった。
まず女性としての同姓目線ではゲルダの気持ちを考えてしまうと切なくてたまらない。
かつて確かに愛し合っていた男性が、目の前にいながらにして「いなくなって」いく。顔も体温も匂いもそのままなのに「違う誰か」になっていく。
これってかなり、辛い。不在を感じないまま、ただ失っていくのだ。手術に向かうアイナーを見送るシーンは苦しくて泣けた。
愛するひとのありのままを受け入れることが、自分の愛するひとを殺すことと同義になるなんて誰が想像できるだろう。
リリー目線ではこれまた胸が苦しくなった。自分が認識している自己を周りから認めてもらえず異性を見る目で見られる。自分で認識している性と自分の肉体が逆の造りをしている。この違和感を四六時中抱えて生きるなんて。
自分を色んな形で否定され続けて生きる苦しさは、きっと想像を超える過酷さだ。
トランスジェンダーの苦しみが前よりほんの少しは想像できる。性適合手術は劇中の言葉を借りるなら「あるべき姿に戻す」治療なのだ。
アイナー役の俳優さんの恥じらうような笑顔がとってもチャーミング。だからこそラストが余計に切ない。
ゲルダ役の女優さんも、アイナーがリリーに変わって(代わって)いく過程の戸惑い、苛立ち、捨てきれない愛情がすごく伝わってきて良かった。
それにしてもうまく言えないけど、ゲルダとアイナー/リリーの関係は画家と被写体という客観性が働く関係が介在したことで成り立っていたような気がする。
「ジェンダー」について色んなことを問いかけてくる作品だった。たぶん私が今まで考えてた以上に性の混乱は自己認識、他者の認識の根幹を揺るがせるのだ。確実に。