「リリーに焦点を当てたかったな」リリーのすべて うさまるさんの映画レビュー(感想・評価)
リリーに焦点を当てたかったな
とっても悲しい終わりで。
予想もしていたけれど、やはりハッピーエンドにならなかった。
夫を受け入れるゲルダに焦点がどうしても当たってしまった。
それは観ているこっちがゲルダよりの立場だからだと思う。
リリーに感情が入れなくて、客観的にしか観れなかったのですが、
性転換を受けに汽車へ乗ってリリーと別れる時
ゲルダとハンスの見送りシーンが印象的。
ゲルダのなかでたくさんの葛藤がある中での見送り。
自分のスカーフをお守りにリリーに渡して
励ますけれど、汽車が発車した後は汽車と真逆の方向へ颯爽と歩き出し
涙を流す。
どんなにゲルダは辛かったろう。と。
それ以上に辛いのが夫のリリーであろう、と思っているのか、その涙はたくさんの色々な意味があったと思いました。
私たちは結婚していたの?
というベッドでのシーンでもそれを考えさせられた。
夫は夫でも、もう夫ではなく、リリー。
リリー本人は、もう以前の私じゃない。
と言い張るが、そんなの周りには通用しない
同じ人間同じヒトであるから、ゲルダはボーッと天井を見ながらも、その夫をどう受け入れて行こうか
考えているように見えた。
まだ理解の少ない世の中で、この映画はとてもいいと思う。
ただ、リリーに対しての同情や悲しみ、というよりも
やはり立場がゲルダよりな為、
どうしてもゲルダに視点がいってしまった。
主人公のリリーの気持ちになれたらよかったが、
夫を受け入れる強い、妻のゲルダに、何度も何度もガンバレ!と言いたくなってしまった。
欲を言えば、主人公のリリーに焦点を当てて映画を観てみたかったが
やはり最終的にはゲルダの芯の強さと、優しさにどうしても素晴らしい!とそこにだけ気持ちが入ってしまったので
そこだけ…
同じリリーのような方にこういう映画はたまらないと思います。私は分からなかった視点もたくさん共感できるのでは。
ただ、同じ共感を得られない私のような人にも
こういう映画を観て、ゲルダのように強く受け入れてあげれたらと思う。
大半の方が、これを観ると、リリーが自己中でワガママだと思われるシーンがたくさんあるのではないかと思った。
そんなシーンも、私の解釈では今まで秘めていた、自分でも気がつかなかったリリーという自分の中の女性の存在を出せて
ようやくさらけ出すことが出来る!
やっと、我慢しなくてすむ!なんていう思いが
そういうゲルダに対しても「受け入れてほしい」「私についてきてほしい」等の
たくさんのワガママと思われるシーンに出たのではないかと思います。
映画は、自分が体験できないことを感情移入できるのが1つの魅力ではないかと思っていますので
リリーへの感情移入がどうしてもできないというのは、私自身も、まだまだ理解ができてない、偏見があるのかな?と
見直させられる映画でした。