「焦点不明で娯楽映画でもない何か」グッドモーニングショー 真中合歓さんの映画レビュー(感想・評価)
焦点不明で娯楽映画でもない何か
息子はできちゃった婚して同僚の女キャスターには迫られて今日は散々だ~と思ってたら、今度は立てこもり犯に呼ばれちゃったよ~もう~なんて日だ!!
というコンセプトの今作。
テレビマンの裏側とか犯人の動機とか息子のデキ婚とか、その辺は全部オマケでしょう。飽く迄も、ある男の悲惨な一日の物語、としか、私は解釈できなかった。
まず、物語の序盤で忙しいテレビマン達の『リアル』が描かれる。ここは監督さんがテレビ出身ということもあって、非常に魅入れた。シン・ゴジラ顔負けの止まらないやり取りの中で、少し挟まれる気休めの会話。視聴者を意識した編成。速報が来ればバッサリ切られるネタ。占いは占い師から送られてくるんだ、とか。
ただ、ここで既にノイズが一つ。長澤まさみ演じる女キャスターだ。実は冗談で言っているのかと思いきや、マジだった(笑)。
うん、普通~~にキモい。
サイコパスも入っていて、ノイズでしかなかった。後半で犯人と対峙する主人公を補佐するのだが、最早前半の罪滅ぼしにしか見えなかったし(メタ的に)。
話を戻して、本作は前半が終わりに差し掛かる頃、急展開を迎える。立てこもり犯が主人公を要求してきたのだ。ようやくここでメインということもあってか、若干バランスも悪いのだが、それ以上に言いたいことだらけなので割愛。
そして犯人と対峙する前に、あるトラウマが主人公を蝕む・・・のだが、種明かしはスタジオの、しかも長澤まさみではない方のキャスターがぺろっと喋って終わり(笑)。で、そのトラウマも特に後ほどに効いてくることはない。
犯人との局面を打開するヒントだとか、そういう物語的に効いてくることは一切無いのだ。あ~邦画観てるんだな俺ってなりましたわ・・・。
なら、メインディッシュの犯人の動機は!?中井貴一と何か深い因縁があるんだろ!?無いにしても、何かこう、テレビというもに訴えかけるような何かが!!有るんだろ!!??
100人中98人はそう思っていた筈だ。
が、動機は・・・
「俺昔ここで働いててある日火事犯にされて首になってその後も色々辛くてある日貴方(中井貴一)に手紙渡そうとしたけど断られて・・・etc
だからあんたを呼んだんすよ!!
謝れ!!!!
」
は?
えっと、つまりだな・・・あんまり関係無くないか?(笑)。つか店長呼べよ。
中井貴一が通い詰めていたカフェという訳でもなければ、長澤まさみが関係していた訳でもない。ましてや、テレビ局も全く関係無い。いわばジョーカー的な犯人に、たまたま因縁を付けられた。それだけなのだ。
いや、シンプルにマスコミに叩かれたとか(罪はなすりつけられたのだから恨む理由になるし)でもいいのに、全くテレビ局が掠りもしていない事実に、少し違和感を覚える。
これは各方面でも言われている通り、テレビマン出身の君塚良一監督が、自らの畑を全力で批判することができなかったチキン行為の結果なのだ。全体的には今のテレビに訴えかけるような雰囲気を醸し出していても、肝心の部分ではクソみたいな所に逃げ、「まあ俺たちテレビ好きだし頑張ろうや!」で締めている。しょうもない。
肝心のメッセージ性的な部分がこうであるから、なら、単純な娯楽映画としてはどうなのか?という部分に関しても、正直微妙。犯人とのやり取りもドタバタする訳ではなく真摯に向き合うし、コメディらしいところは不快な長澤まさみ関連だけ。
《総評》
コメディでもなくメッセージ性のある映画でもない、中途半端な映画でした。何より、犯人の動機とマスコミ批判への逃げが最悪で、凡作でもなかったです。何も考えずに観ても楽しめないでしょう。
ポスターや予告編が明らかに面白そうなだけに、より悪質です(笑)。
P.S ちょいちょい映る低身長のスタッフさんが可愛かった♥