「タイの『ヤホー』とは全く関係無いです」バンコクナイツ いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
タイの『ヤホー』とは全く関係無いです
「サウダーヂ」の富田監督の手懸けた作品。とはいっても観たことはないのだが、菊池成孔氏が以前紹介していたので、それなりに興味は持っていた。地方の南米日系の人達の話ということで、その地域の公然とした問題を鋭く描くというテーマは、正にそこに生きる人々の本音と建て前をあぶり出す映画としての題材に持ってこいの作品なのだろう。
そして、今回のバンコクナイツはそれのアジア版という位置づけという認識を持った。但し、今のタイの状況はどうなのかさっぱり不勉強であり、そういう意味でも今回の作品、楽しみであった。
確かに、混沌としたアジアの世界が描かれている。そして、急激な近代化、しかし地方との格差、そして植民地支配は終わったが未だに西洋人や日本人の欲の捌け口としての任を甘んじて受容れてしまっていること、しかしそこは逞しく生きるタイ人のしたたかさを演出している内容に仕上がっている。その中に、幽霊や聖獣、そして仏教など、ファンタジーや宗教観なども織込みながら、娼街で働く女、それを利用とする男の生き様を静かに観客に訴える様に物語を進めていく。
ともすれば、公共放送のタイ紀行特集みたいな内容になりがちな部分も否めないが、そこに軸足を置かないことを成し得たのが、皮肉にもキャストの芝居や台詞回しの下手さであるところが大きい。もっと上手な役者がいるだろうし、主役のタイ女性に至っては、脱いでもない、濡れ場もない。バイオレンスやセクシャルは殆ど描かれない。但し、『ドラッグ』のシーンは多い。伏線の回収もあまり上手く繋がっていないとみてとれたし、最後辺りでもう一人の主役である、元自衛官が45口径拳銃を買った後、結局その後の使用も描かない
結局ラストのオチはよく分からないまま、エンドロールで、撮影中のNGなどを流してしまう辺りは、意図が全く読めず戸惑いが残る内容であった。これを3時間もの上映時間を費やす意図も不明で、かなり哲学的なテーマなのかもしれない。ま、一生タイには行くチャンスなどない自分としては、異国の人達の唯では起きぬしたたかさを再度確認した内容であった。
>>ナーガルジュナさん
ご指摘、大変参考になりました。誠に畏れ入ります。
全くの歴史認識不足だったため、観覧した際の話のイメージで、調べもせず感想を述べてしまいました。
ただ、ネットでの記述ですが、『仏印(フランス領インドシナ)との国境紛争でタイはメコン川西岸地区を仏印に割譲する代わりに独立を守ったと言われています。現在メコン川はタイ-ラオス国境になっていますが、一部メコン川がラオス領内に入っている地区があります。』という文言があったので、その辺りのことを指しているのかもしれません。実際、フランス人の傭兵くずれみたいな役がでて、クスリとAIDSを蔓延させていることのシーンがありましたし、主人公の元自衛官も仕事でラオスに行ったので、そこが話のキモだったりしますから、ナーガルジュナさんのご指摘は作品の根幹部分を突いているかと思い、大いに反省致します。大変失礼致しました。