「熱血刑事 怒りと正義の権力天誅編」ベテラン 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
熱血刑事 怒りと正義の権力天誅編
韓国警察の特殊強力事件を担当する広域捜査隊に所属する熱血刑事の奮闘を描いた刑事アクション。
広域捜査隊と言えばマ・ドンソク兄貴も異動し、作風もあちらを思い起こさせるが、公開はこちらが先。今年、10年ぶりに続編が公開された。
似たような設定だって日本の刑事ドラマに幾つある? つまりそれは、これこれ!…と膝を打ちたくなる面白さが保証されているという事。監督は『モガディシュ』や『密輸1970』のリュ・スンワンだし。
唯一の後悔は、もっと早く見ておけば良かった~!
気性は荒いが正義感漲るドチョル、神経質なチーム長オ、紅一点のミス・ボン、肉体派のワンに若いユン。彼らは広域捜査隊の刑事たち。
冒頭早速、少々強引無鉄砲だが、事件を解決。
これだけでも分かる通り、痛快スカッと、悪は許さない!
そんな熱血刑事とチームに立ちはだかるのは…
ドチョルはある日、アドバイザーとして関わった刑事ドラマの打ち上げパーティーで、巨大財閥シンジングループの3代目、テオと出会う。
イケメンで外面はいいが、ドチョルはテオに悪人臭を嗅ぎ取る。犯罪はするな、と忠告。
それからほどなくして、知人のトラック運転手ペが投身自殺して意識不明の重体という報せを彼の幼い息子から受ける。
ペは賃金未払いを直属の運送会社と大元の企業に対して抗議していた所だった。その大元というのが、シンジングループ…。
きな臭さを感じたドチョルは息子に話を聞く。父親と同伴していた息子は、シンジングループの室長室で、テオの命令で、父親と運送会社所長が殴り合いをさせられた場を目撃。
そこでさらに何があったか…? ドチョルは独自で捜査をするが、テオによる巨大権力が幾度も立ち塞がる…。
熱血刑事vs巨大財閥御曹司。
ドチョルも暴力捜査で違法スレスレだが、とにかくテオがクズゲスクズゲスクズゲス!
性格はサディスティック。気に食わない奴は誰彼周り構わず暴行。
従兄のチェ常務が悪事もみ消し。
父親の会長からは落胆されているが、グループの世間体面子から庇護されている。
こんな奴を野放しにするな! 『水戸黄門』や『半沢直樹』のような日本人大好き、分かり易いくらいの勧善懲悪ストーリー。
巨大権力ほど質が悪いものはない。
警察上層部に圧力。上役から不条理命令。一切捜査に関わるな。
管轄外ならまだしも、絶対アンタら、息が掛かってるな? 恥を知れ!
令状ナシの監察取り調べ。
さらにはチェ常務がドチョルの妻を金で丸め込もうとする。
熱血刑事も家では妻の尻に敷かれている。チェ常務への対応と夫を叱咤激励する奥さんがカッコいい…。
ドチョルの怒り爆発! こちらもやられてばかりじゃない。
馴染みの記者や協力者を得て、証拠固め。
上層部は敵の息掛かるが、直属の上司は命令と正義の狭間で揺れ、説得。
警察の面子の為だけじゃない。犠牲者やその家族の為、権力に服従させられる弱者の為、己の為。
絶対に悪を許すな!
ファン・ジョンミンの熱演。アクの強い役柄多いが、こういう熱血役も合う。巧い人は何をやっても巧い。
身体を張ったアクション! 体当たり捜査やクライマックスのド派手カーチェイス。それから、ミス・ボンの飛び蹴り。ミス・ボン、ナイス!
ユーモアもたっぷり。チームの掛け合い。クライマックス・シーンには何と、アノ人が…! 流行りのユニバースでアノ豪腕刑事ではなく、お株を奪っちゃいけないとアクションも無いけど。
敵がムカつけばムカつくほど、ドチョルらの奮闘に熱くさせられる。分かり易さ、見易さ、テンポもヨシ!
抜群のエンターテイメントだが、背景にあるのは、当時世界を唖然とさせた“大韓航空ナッツ・リターン事件”を反映させた権力者の横暴。
“韓国アカン警察”はよく見るけど、“韓国アカン権力”は殊更震撼させられる。
事件の真相。室長室殴り合いの後、ペは息子を先に帰らせて再びテオに抗議。カッとなったテオはペを殴打。ペはガラス机に頭を強打し、意識不明に。闇に葬る為に、ペを投身自殺に見せ掛けて…。テオも取り巻き連中もゲスの極み!
そんな数々の言動もさることながら、クライマックス、逃げる為に、車で白バイを跳ね、信号無視して渋滞に突っ込み、通行人いっぱいの狭い路地を強行突破しようとするゲスの極み!
コイツの保身の為に奔走や身代わりにまでなるチェ常務、バカを知った上で野放しにする会長もバカ同罪。
バカ愚行を怪演しきったユ・アインも天晴れ!
それにしてもクライマックス、頭を使ったね。ドチョルもただの無鉄砲じゃない。
社会悪を公にし、それでいてちゃんと正義の鉄拳を食らわす。
無論、現実だったら大問題。映画だからこそ。
法やモラルやリアル志向の刑事ドラマとか言うけど、何だかんだこういう痛快刑事アクションが皆、好きなんです。
事件は解決。お疲れッした~!
やはり面白かった。
さて勿論、続編も見ようかね。
