劇場公開日 2016年4月22日

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「23年前、純粋無垢だった青い目が、自信に満ちていた。」レヴェナント 蘇えりし者 Cディレクターシネオの最新映画レビューさんの映画レビュー(感想・評価)

4.523年前、純粋無垢だった青い目が、自信に満ちていた。

2016年6月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

興奮

怒涛の復讐劇だし、

大自然の冷たく過酷な世界だし、

150分の長尺だし、グロなR15だし、

観なきゃいけないけど、

何とも重いなぁと躊躇してました。

体調やメンタル整えて、覚悟をきめなきゃと、

かなり後回しにしてた作品(笑)

バベル、バードマンがとてもよかった

イニャリトゥ監督に、

ディカプリオのやっとつかんだ悲願のオスカー。

もちろん期待大ですね!

幼い頃アメリカの友人とキャンプした時、

テントの中でこのお話になったのを憶えています。

熊に襲われ負傷した男が、

息子を殺し自分を置き去りにした男に復讐するという、

本国では誰もが知ってる有名な実話。

映画ではずいぶん脚色してるけど

話はいたってシンプルだから、

誤魔化しはきかない。

演出や役者の力量が問われるでしょう。

この素材はかなりのプレッシャー

だったんじゃないかな。

作品は、見事な秀作です!

大自然と対峙する壮絶なサバイバルの中で、

生きようとする男の魂の息遣いを感じ続ける。

ネイティブ・アメリカンと白人の

血を血で洗った歴史が描かれていくのだけど、

今までのインチキ西部劇を

嘲笑うかのようなリアリティ。

ただ復讐をするために

サバイバルを続ける主人公が、

凄まじすぎる。

ディカプリオが自らを極限においた

嘘のない演技は、

スクリーンを通して響いてきますね。

こんなにもホンモノの映像の力を

見せつけられた作品は、

いつ以来だろう。

監督のストイックな絵作りに、

オスカー常連カメラマンが答えて、

二人でアカデミー受賞は頷けますね。

全てのカットが濃厚で、アートのようで、

息をのむほどに美しい。

グリーンバックなどを一切使わない絵は、

語るものが多くて強いなぁ。

そして自然光がもたらす命の息吹は、

身震いがするほど怖い。

やはり映画はビジュアルの強さなんですね。

テーマは魂。

revenantは死者の魂という意味なのかな。

死んだ妻と息子と自分の魂が共存するまでの、

男の生き様が描かれている。

終焉では目標を失ったディカプリオの、

全てを悟った表情が素晴らしかった。

そして黒味のエンドロールになり、

主人公の呼吸がしばらく続くことで、

イニャリトゥ監督のメッセージが

観客に問いかける。

見事に主人公の魂が昇華していった瞬間でした。

描ききったイニャリトゥ監督と、

それに答えたディカプリオ。

23年前、ギルバート・グレイプで出会った

純粋無垢だった青い目が、

印象的なラストシーンでは自信に満ちていた。

集大成でアカデミー男優賞が取れて、

本当に良かったね。

一生忘れない映画リストに、

また1本名作が加わりました。

Cディレクターシネオの最新映画レビュー