「この作品ゆえの体験」レヴェナント 蘇えりし者 ハルさんの映画レビュー(感想・評価)
この作品ゆえの体験
今作は自然描写や開拓時代の考証など映像そのものに重点を置いた作りではあるが、そこに血を通わせたのはやはりレオをはじめとする俳優陣の頑張りだろう。撮影自体が過酷だということでどこからが演技なのかと疑いもするけれども、こうやって仕上がってみると制作サイドのアイデアのほとんどはまったくもって成功していると言える。
冒頭のカメラワークで早くも唸らされ、全編を通じて隙の無い絵作りがなされているからシンプルすぎるストーリーと少ないセリフで進行していくことが心地よい。そういう体験は『グラビティ』や『マッドマックスFR』でも出来たし、そうした映画の原点回帰のようなことを極めて緻密な手法でもってなすというのは今後も続いて欲しい傾向だと思う。
今作のように劇場で体験、体感することの意味を掘り下げてくれるこの作家は本当に面白い。
そしてレオ。イニャリトゥが言ったように彼こそが「レヴェナント」だった。メタの意味も含めて。これまでの経緯が無ければこの作品をあのハードさで演じきろうとは思わなかっただろう。『ギルバート・グレイプ』で知ってから23年‥若くして助演でノミネートされてから紆余曲折あってこうやってオスカー主演部門を受賞したのだから、やはり稀有な存在だと言える。いやあ目出度い。
コメントする