劇場公開日 2019年7月20日

「降り注ぐ雨の中に浮かんだシャボン玉のような儚く淡い物語」ムクシン よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0降り注ぐ雨の中に浮かんだシャボン玉のような儚く淡い物語

2020年11月2日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

10歳のオーキッドは体の大きないじめっ子男子にも果敢に挑みかかる勝ち気だけど読書好きな女の子。活発な性格で近所の女子ともイマイチ仲良く出来ないオーキッドは夏休みのある日ムクシンという2つ歳上で長身の男の子と意気投合、毎日2人で楽しい日々を送っているが無邪気な彼女達の周りには実は大人の事情が満ちていて・・・。

ヤスミン・アフマド監督作品に触れるのは『タレンタイム』以来。本作は『タレンタイム』よりも前の作品ですが、複雑な民族感情がぶつかり合うマレーシアならではの空気感とそれに拮抗する爽やかなユーモアが通底していて、主人公達を包み込むように降り注ぐ雨と村に語り継がれる伝説が、恋と友情の間で揺れ動く淡いにも程がある感情と彼らの周りにいる人々の苦しみに優しい光を投げかけています。自然光の下で撮影された粒の粗い映像には何とも言えないノスタルジーが宿っていて、最後に添えられるオマケとともにザラついた心の隙間をそよ風が吹き抜けていくような爽やかさが残ります。

ヤスミン・アフマド監督作品をスクリーンで観れる機会が少ないのですが、今後も追いかけていきたいと思います。

よね