「良くも悪くも女性監督らしい、母親の感情に焦点を当てたホラー作品」ババドック 暗闇の魔物 Fate number.9さんの映画レビュー(感想・評価)
良くも悪くも女性監督らしい、母親の感情に焦点を当てたホラー作品
他の方のレビューにもありますが、なるほど、良くも悪くも女性監督らしい、母親の感情に焦点を当てたホラー作品。
★ 以下、ネタバレ含みます ★
ババドックは発達障害気味の子供に対する母親の抑えきれない怒りや憎しみ、哀しみ、後悔、自己嫌悪といった負の感情のビジュアル化で、まあ要するに「シングルマザーってこんなに大変なんですよ」という事が言いたいようですが、男の私から見ても、まるでシングルマザー全員が子育てに悩み苦しみ、人生や若さを搾取されているかのような被害者意識の強い描き方には少々鼻白んでしまう部分もあります。
舞台もほとんど家の中だけで変化が無く、実質、登場人物も親子のふたりだけなので、全体的にテンポが悪く感じられます。不気味な絵本を捨てたらいつの間にか戻ってくるシーンを見て、「あ〜またこのパターンか」と思ってしまいました。他にも、電灯が明滅するとか、暗闇に何かいそうでいないとか、やっている事も思わせ振りなだけで演出としてありきたり。親子そろってキャーキャー、キーキーと甲高い声で叫ぶばかりの演技も耳障りでした(ふたりの鬼気迫る演技自体は素晴らしいですが、監督の演技指導や恐怖演出にセンスが無いのが致命的)。
突っ込み所としては、ババドックの存在が母親の幻覚や妄想なら、途中で息子が壁に叩きつけられたり、ベッドが跳ね回るようなポルターガイスト現象は何?という点。不可思議な物理現象も全部母親の妄想や幻覚で済ますの?せめて客観(他者)視点は現実、主観視点は幻覚や妄想とシーンによる使い分けでもすれば良いのに、そうした気遣いも無し。
ラストシーンも結局自分のトラウマ的な「負の感情=ババドック」を飼い慣らせるようになったという事でしょうか?しかし幻覚がああまではっきりと見えているなら全然克服できていない事になるし、いまいちスッキリしない終わり方です。全体としては「雰囲気ありきの安直な恐怖演出が目立つホラー」という印象しかありませんでした。親子ふたりの熱演には敬意を表して★ひとつ追加で2点です。