劇場公開日 2015年12月26日

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「葛藤がないと物語にはならない」消えた声が、その名を呼ぶ よしたださんの映画レビュー(感想・評価)

1.0葛藤がないと物語にはならない

2016年1月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

オスマン帝国によるアルメニア人の虐殺によって、家族と離散してしまった男の娘探しの旅である。
非人道的な目に繰り返し合うあまり、主人公の男はキリスト教の信仰を捨てる。確かにどれほど悲惨な事件だったのかはよく伝わってくる。
しかし、信仰を捨てることへの葛藤、義姉の死を幇助することへの葛藤、人のものを盗むことへの葛藤がこの映画にはない。
娘の居所を探し求める男にとっては、もはやそれ以外に生きている理由などなく、様々な葛藤の入り込む余地などないことを描いているのかも知れない。神を裏切ることへの迷い、人としての道を外れることへの逡巡がスクリーンに映りこんでいないために、物語が直進的になってしまっているのだ。

佐分 利信