劇場公開日 2016年4月2日

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「ジロジロ見過ぎはトラブルのもと」のぞきめ 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5ジロジロ見過ぎはトラブルのもと

2016年4月10日
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鑑賞方法:映画館

怖い

『トリハダ』の三木康一郎監督、元AKB48の板野友美主演のホラー作。
テレビ局に勤める主人公が、不可解な死を遂げた男性について調べる内、
“のぞきめ”と呼ばれる怪異に巻き込まれていく様を描く。
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ネタバレにならないようボカして書くが、霊場巡礼にまつわる
おどろおどろしい民間伝承をホラーの素材に選んだ点は面白い。
僕は『○○殺し』という言葉自体を今回初めて聞いたのだが、
実は現代の幾つかの都市伝説のルーツにもなっている伝承なのだそうな。

どこからか鳴り響く鈴の音、現場に残された黒い泥、捻じ切られた死体、ダムに沈んだ村……
何らかの因縁めいた不気味な要素を散りばめた点も、ステレオタイプではあるが、
物語を押し進める為のミステリー要素として一定の機能は果たしている。
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だけどもだけど。
それらの散りばめた謎をキレイに纏められてはいなかったかな。
第一あの決着が目的なら、怨霊が危害を加える理由も曖昧になっちゃうし。

それに僕の場合、こういう素材が選ばれると『リング』『八ツ墓村』や
『SIREN』(ゲーム版)のような土着的で澱んだ恐怖を期待してしまう。
だが本作は、折角こんな好素材を選んでおきながら、観賞後の恐怖の
余韻が殆ど残らない。鶏ササミと水菜のサラダ並みにサッパリしておる。

余韻が残らずとも鑑賞中に怖がれればまだ良いが、その点も今ひとつ。
これまで観た他のJホラー作品と比較すると、怖さは中の下ってとこかしら。
飛び上がりそうになるシーンは2度ほどあったが、それも映像や
導入の上手さというよりは、大きな音でビクッとさせられた印象。
怖いっちゃ怖いが、演出自体は割とワンパターンでイマイチ。

そもそも、『眼』はホラーとしては結構扱いづらい要素だと個人的には思う。
数々のJホラーやスピルバーグの『激突!』しかり、襲撃者の感情や視線の向きを
読み取れない事が不安感を煽る訳で、人間の感情の窓たる『眼』を画面上で
たっぷりと見せる事は、恐怖演出という点ではリスキーだと感じる。
だが本作は、これでもかというくらいに幽霊の眼や顔がどアップになる。そして最も不味い事に、
肝心の『眼』はCG加工をバリバリ施したせいで、まるで現実的に見えないのである。
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主演の板野友美の演技もいただけなかった。
美人ではあるし台詞回しが特別酷いとも言わないけど(上手いとも言わないけど)……
妙な言い方だが、他の人物との会話シーンで『会話してる感じ』がしないというか。
相手の演技や台詞に反応せず、演技の順番が回ってきたから喋っているだけのような、そんな印象。
“のぞきめ”相手にメンチを切るシーンだけは良かったが。

他のキャストはそんなに不味くはない。
吉田鋼太郎は、結局何がしたいのかイマイチ分からん役だったが、胡散臭さ満点の雰囲気は流石。
一番酷い目に遭う入来栞里も怯え方が上手かった。同県の出身だから贔屓目に見てる訳じゃないすよ。
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という訳で、イマイチの2.5判定。
ライトなホラーを観たい方には良いかもだし、真似しちゃいけないお箸の使い方などの強烈シーンも
あるが、期待していたほどの澱んだ雰囲気のJホラーには仕上がっていなかったかな。

<2016.04.02鑑賞>
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余談:
映画の最中、スティングの名曲『見つめていたい(Every Breath You Take)』
というラヴソングの歌詞がストーカー気質で怖いという話を思い出した。
「君の息遣いのひとつまで、いつも見ているよ……」って……ヒ、ヒイイ……。

浮遊きびなご