「【長い長い坂道】」永い言い訳 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【長い長い坂道】
長い長い坂道を自転車で登る。
ぐいぐいペダルを漕ぐ。
坂のてっぺんが近づけば近づくほど、息があがって、脚にも力が入らなくなって大変だ。
でも、もう一息のところになると、パッと視界が開けて…。
永い言い訳は辛い。
永い言い訳は、後ろめたさや、自分の弱さから始まる長い長い坂道を自転車でフラフラしながら登るようなもので、そして、坂のてっぺんはなかなか見えない。
夏子の事故の時、他の女として寝ていた幸夫。
亡くなるのは父親の陽一の方が良かったと考えた真平。
だから、二人は大切な人の死や悲しみに向き合えないのだ。
そして、
幸夫は真平を通して、
真平は幸夫を通して、
自分自身と向き合っているのだ。
きっと、お互いを理解することで、自分を許してあげたいのだ。
対比される、ピュアな陽一。
無邪気で率直な灯。
内面(うちづら)と外面(そとづら)の使い分け。
良く見せたいが為の虚飾。
期せずして失ったもの。
失うべくして失ったもの。
どうしてそうなったのか。
思い返したら、僕だって言い訳だらけの人生ではないか。
ずっとあると思っていたものが突然なくなる。
夏子自身だけではなく、夏子の気持ちが既になくなっていたことを知る幸夫。
生きていると、言い訳が必要な事は沢山ある。
人間だから。
でも、同時に自分自身と向き合うことも大切だ。
永い言い訳を終わらせることが出来るかもしれないのだ。
長い長い坂を登り切るには、少しずつ、ヒーヒー息を切らしながら、確実に、ペダルを漕がないと、てっぺんには辿りつかないのだ。
だが、必ず坂道に頂上はある。
「永い言い訳」は、僕の大好きな作品だ。
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