「大切な人を失うということ」永い言い訳 yupppiiiさんの映画レビュー(感想・評価)
大切な人を失うということ
奥さんのことを雑に扱い、ろくに話もしないで、しかも留守中に愛人を連れ込み堂々と浮気。
その最中に奥さんを亡くす。
最初は喪失感や悲しみなど感じられなかった主人公。
しかしながら愛人に拒まれ、そのタイミングで奥さんと共に亡くなった友達の旦那とその子供たちと関わることから少しずつ変わってく。
自分にとって“かけがえのないもの”を見つけた感じ。
これもある種の“愛のかたち”。
自分の居場所であり、心の拠り所であり、自分の存在意義も感じていた。
でもそこに現れたのが、“新しいお母さん”となり得る女性。
自分が月日を重ねて積み上げてきた“絆”を一気に横取りされたような気持ちになったのではないだろうか。
同時に奥さんを愛さなかったことの後悔。
浮気をしつつも奥さんは自分のことを愛してくれているんだろうという奢りの気持ちがあったけれど、実際は奥さんは分かりきっていて「もう愛していない」と携帯の未送信メールに残していたことに気づき、自分は大切なかけがえのないものを全て失ってしまった…そもそもそんなの最初から築けていなかったのでは…と自暴自棄に。
そんな主人公を元の軌道に戻させたのは、子供たちのお父さんの事故。
事故の前にお父さんに暴言を吐いてしまったという息子に、主人公は言い聞かせる。自分自身に言い聞かせながら。
“大切に想ってくれている人を貶めるようなことを言ったりしてはだめだ”と。“側にいてくれるのが当たり前だと胡座をかいてると気づいたら失ってしまうものだ”と。(正確な台詞ではなくこんなニュアンスだったはず)
主人公は奥さんを愛していた…でも…
その『永い言い訳』を自身の小説として出版。
もうこれ以上大切なものを失ってはいけない、主人公が心に刻んだようにみえた。
本木さんはこういう不倫系の悪い役が多くて、その印象があまりに強くて好きになれなかった(ごめんなさい。本木さんのせいではなく役柄のせい)
この作品のオープニングからして、やっぱりな!っていう感じで悪い顔をしていた。
でも最後のシーンでは本当に清々しく、むしろ格好良く見えた。不思議と。役者さんってすごいな。
そして、西川監督は人の腹黒い部分を綺麗に描写するのが相変わらず上手いなぁー