「黒沢清監督作品あるあるで、超あがる!」クリーピー 偽りの隣人 Nightmare?さんの映画レビュー(感想・評価)
黒沢清監督作品あるあるで、超あがる!
これは間違いなく『CURE』から繋がる、人の心に入り込む「邪悪」を丹念に描いたビックリ系ではないホラーの傑作だ。話の通じない邪悪であるにも関わらず、なぜか隣人を支配していくクリーピーな男。『CURE』では理解はできないまでも、殺人者に仕立てられる人々が何か救済されている(周りからみればいい迷惑なのだが)感じになっているが、本作では邪悪の目的がまったくわからない。強いていえば、そうであることを続けていくためとしかいいようがない。つまり巻き込まれる側からすると、完全に脅威な存在。しかも、知らないうちに絡め取られているようで、もう隣人になったが最後逃げようがない感じが、すごく怖い。
黒沢清作品あるあるでいうと、廃墟寸前の建物がよく出てくる。映る部屋の構図がとにかく異様。あんな一般住宅なのに、防音設備がされた重い鉄扉の地下室があるなんて! 音の使い方が印象的。何の音なのかわからないけど、鳴ってる音が怖い。印象的な風景、今回は住宅地に不釣り合いな、鉄骨台に載った給水タンク。どうみても異様。車窓にクロマキー合成される背景が、空を飛んでいるんじゃないかとしか思えない雲。長回しが多いことで有名だが、その弊害として演劇的になってしまう(『CURE』ではそれがあった)が、本作ではその感じはなかった。とか。
誰が問題の人物なのかは、あらかじめ提示されている。どうみても香川照之がクリーピーな隣人だ。第一印象も悪い。なのに、どうして周りは支配されてしまうのか。その様と、疑似家族の作られ方がおぞましく描かれる。これほどまでに不愉快なのに逃れられない感じは、理解できないからそこ起こり得るリアリティーなのかもしれない。