「サイコパスを天才香川照之が怪演」クリーピー 偽りの隣人 akkie246さんの映画レビュー(感想・評価)
サイコパスを天才香川照之が怪演
引っ越してきたら、サイコパス、異常犯罪者が隣人であったという設定のスリラーである。香川照之演ずる正体不明の男がとにかく怖い。犬をうまくからめたあたりもうまい。大学の犯罪心理学者という設定もきいている。
未解決になっている六年前に起きた一家失踪事件があり、その詳細が少しずつ明らかになってゆく。と、同時に元刑事の主人公高倉の妻の様子に異変が起き始める。映画全体からすると、会話などでかなりの部分を観客の想像力で補うような構造になっている。どぎつい描写は比較的少ないが、地上波テレビでは放送できない作品だ。
まず、六年前の事件については、修学旅行で不在だったためひとり残された長女のたどたどしい記憶によって口述される。この場面は事件そのものの説明ではないものの、むしろそれがゆえにリアルだ。窓越しの若々しい大学生たちを背景に語られるその内容は、あくまでも事件前夜の家族たちの断片的な記憶。修学旅行前日以前の相手不明の電話だったり、窓越しの誰かわからない男の姿だったりとあやふやだ。しかしこのシーンの演出は完璧だと思う。
高倉のかつての同僚刑事が事件の再捜査を始めたあたりから夫婦二人の高倉家の恐怖は現実化する。謎の爆発から始まり隣に住む西野ではない男の正体が明らかに。中学生の娘の尋常ではない試練。全く姿を見せない西野の妻の最後。隣家にある地獄。同僚刑事たちと妻と高倉と犬のマックスが巻き込まれてゆく。かなりきつかった。
デビッド・フィンチャーの「セブン」のように絶望的ではないラストではなかったことがせめてもの救いだ。しかし後味はよくない。住宅街の一軒家にあのような広い地下室は、もちろんあまりリアルではないが、まったく有り得ない話ではない。