「全ての大人に観て欲しい」無伴奏 きゃさりんさんの映画レビュー(感想・評価)
全ての大人に観て欲しい
予め原作を読んだ際、これがどのように132分に収まるのか気になっていたが、あの長い話を見事に4人の人物に特化したストーリーに仕上げた脚本に脱帽した。
とても流れがスムーズで分かりやすく、あっと言う間に、響子、渉、祐之介、エマの息づく昭和の世界に連れて行かれた。
話が進むにつれ、私達がSNSや紙面を通して観ていた幾つかのショットが、全て鮮やかに一つに繋がり、4人の生き様を見届けるのが胸に苦しい程だった。
原作を読んでいたからこその気付きも多く、監督の狙いや意図するものがカメラワークに見事に表現され、素晴らしく腑に落ちることばかりだった。
全編を通して仄暗い映像がより一層物悲しく心に迫り、この作品に懸ける監督の、静かだがただならぬ情熱を感じた。
4人の役者全てが、自らの命を削ってまであのスクリーンに投影されていたように見えた。
エンドロールまでもが愛おしく、泣けてしまった。
二人の女優も勿論素晴らしいが、今特に想うのは、池松壮亮さん、斎藤工さんの二人が、男として全力で二人の女優を底上げして引っ張り上げて仕上げたのだな…ということだった。
今この作品を通して、池松壮亮さん、斎藤工さんに、
「役者としての男気」
を無性に感じた。
どうか、大人と言われる全ての人に観て欲しい。
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