「嫌な女同士は泣いても連れる」嫌な女 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
嫌な女同士は泣いても連れる
黒木瞳の映画監督デビュー作。
性格が正反対の従姉妹同士の女性2人。
女性だからこそ、女性ならではの視点で、女の嫌な所、女の憎めない所、女同士の関係を描いた着眼点は面白いのだが…。
徹子。弁護士。
性格は超が付く真面目。頭も良く、司法試験にも一発合格。今の事務所で仕事もそつなくこなす。
順風満帆に見えて、友達はゼロ。結婚生活も破綻。空虚な日々。
そんな徹子の前に突然久し振り現れたのは…
従姉妹の夏子。何やら婚約破棄で慰謝料を求められており、助けを。
性格は超マイペース、超傍若無人、超自己チュー、超お喋り。
2人の間には…と言うより、徹子は夏子に幼少時の嫌な思い出が。
ここで再会したが百年目。嫌な女!
徹子を吉田羊、夏子を木村佳乃。このキャスティングでもいいし、逆でもいいような…?
とにかく終始仏頂面&能面の徹子=吉田羊。
うるさいくらいハイテンションの夏子=木村佳乃。
2人の掛け合いが最大の見所。
突然現れて弁護料も払わず突然さいならして、また困ると突然現れて…。
苛々募る徹子。まあ、分からんでもないわな…。
男を取っ替え引っ替え、詐欺にまで手を出している夏子。
稀代の悪女…?
多くの人に迷惑を掛けているのは確かだが、彼女の人となりを窺える時も。
入院中の老人と婚約中。遺産目当てと家族から嫌悪されているが、毎日毎日見舞いに来る。ちなみに家族は滅多に来ない。
人生で一番幸せだった時は?…と聞く夏子。
相手はその時の事を思い出す。
同室の別の老人。いつ逝くか分からない。徹子に頼んで遺言VTRを撮る。妻への思い…。織本順吉が泣かせる。
ただのトラブルメーカーじゃなく、人に寄り添う夏子。
それに比べたら徹子は…。あまりにも無感情故、時々依頼人からクレームも。
夏子と関わって、徹子の中で何かが変わり始める。
それは時に感情爆発の喧嘩にもなるが、嫌で嫌で堪らないけど、嫌いになれない。
嫌な女。てっきり夏子の事かと思ったら、自分にうんざりな徹子自身の事。これは秀逸だった。
織本順吉や永島暎子の好助演。
夏子の被害者(?)の十人十色の男たち。中には夏子を騙したサイテー男がいて、大逆襲!
痛快であったり、愉快だったり、ホロリともさせられ、黒木瞳監督の手腕は悪くはないが、可もなく不可もなくといった所。
もうちょっと秀でたものが欲しかったが…、無難な仕上がりで“嫌な映画”にはならなかった。