「好みが分かれる ラブコメ上級者向きの逸品」エイミー、エイミー、エイミー! こじらせシングルライフの抜け出し方 うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
好みが分かれる ラブコメ上級者向きの逸品
『アイ・フィール・プリティ』で、ちょっとユニークな視点で勘違い美人を好演したエイミー・シューマー。彼女の長編映画デビュー作品にして、一部で高い評価を受けたラブ・コメディ。
1998年の『セックス・アンド・ザ・シティ』を発展させたようなストーリーは、赤裸々に表現されたSEX描写と、歯に衣着せぬセリフで彩られ、R15指定になっているが、エロさは感じない。なぜなら、女性の視点でSEXを描いてあるからだ。例えば、彼女がどんなふうにアソコを舐めてほしいかを、まるで料理のレシピを指示するように言われても、それで欲情する男はいないだろう。まあ、性癖は様々なので、断言はできないが。家族そろってリビングで鑑賞するような映画ではない。
男と長続きしないが、相手には不自由しない雑誌編集者。普通なら美人で均整の取れたボディの人気女優がキャスティングされるところだろう。映画会社の重役は、客入りが悪そうな、実績のない、美人でもないエイミーの企画にゴーサインを出すとは思えないから。例えばエマ・ストーンとか、アン・ハサウェイあたりを起用して、どっかで見たことのあるラブ・コメディに仕上がっているはずだ。
この映画のいちばんの特徴は、主人公がたいした美人でもなく、欠点だらけに見える等身大の女性を、まさに自分の身の回りにいるような存在感のエイミーがリアルに演じていることだ。日本だと柳原可奈子さん、フォーリンラブ・バービーさんあたりが近いポジションだろうと思うが、残念ながら彼女たちがこの役を演じたとしても誰もそんな映画見たくないだろう。エイミーには言葉ではうまく表せない不思議な魅力があり、多くの男性がその魅力にハマる。
そしてもうひとつの売り物が、豪華脇役スターたち。というより、現役の(当時)NBAの人気選手レブロン・ジェームズを本人役で起用し、彼の日常をごく自然に描いてある点にも興味を惹かれる。友人と食事をしても割り勘で、「僕は金持ちだけど、引退したらただの黒人だ。誰からも相手にされなくなる。MCハマーになりたくはない。」なんてセリフを、脚本段階でどうしていたのか。脚本を書いたのもエイミー・シューマーだけに詳しく知りたくなった。
外科医でエイミーの恋人役を好演するビル・ヘイダーも芸達者で、そこそこバスケが上手そうに見える。ところがレブロン・ジェームズには全く歯が立たず、子ども扱いだ。(当たり前か)
妹役のブリー・ラーソンはご存じキャプテン・マーベルで大ブレイク。『ルーム』でオスカーを獲得した後だけに、主役じゃないこの映画に出演したのは、おそらくエイミーの存在抜きにはあり得ないだろう。
ほかにも、劇中劇映画「DOG WALKER」に主演するダニエル・ラドクリフとマリサ・トメイとか、名前だけ連呼されるマーク・ウォルバーグ野郎とか、腰を痛めた本人役のマシュー・ブロデリック、WWEの人気レスラー、、、本当に書ききれないほどにカメオ出演の嵐。いや、それぞれがカメオの領域をはるかに超える力の入れようで、この人たちのスケジュールをよく合わせたな、と思える豪華な顔ぶれ。それでいて、内容はごく平凡なコメディなのだから、職人気質の監督と、エイミーの人徳なのだろうなと個人的には納得した。
早く、『アイ・フィール・プリティ』の次の作品が見たいものだ。この映画でも不美人が魅力的に振舞う映画だっただけに、きっと多くの女性から共感を得たのだろう。
2019.12.16