「『君の名は。』より面白いパラドクス!拾いもん」トランス・ワールド kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
『君の名は。』より面白いパラドクス!拾いもん
オープニングはコンビニ強盗する若いカップル。現金は奪い取り、ついでに「その金庫もよこしな!」と店員に銃を突きつけるジョディ(サラ・パクストン)だったが、「お気に召さないと思いますよ」という店員の声とともにドーン。全く風景が変わり、森の中を彷徨う妊婦サマンサ(キャサリン・ウォーターストーン)の姿が描き出される。
小屋にたどり着き食料を探してみるが、そこへ小屋の住人かと思われる男トム(スコット・イーストウッド)が斧を持って現れるのだ。ホラー要素はここだけだったかと思うが、サバイバル生活を強いられ、翌日にはまた一人の女性が現れる。あ、強盗やってたジョディじゃないか!と、サバイバル生活も3人で過ごさねばならなくなった。
サマンサはガス欠の車、トムは事故った車、そして強盗やったことを隠しながらも瞬間移動してきてしまった女ジョディ。水や、寒さを防ぐために苦労しながら、昼間は森からの脱出を考えていたのだが、どこへ向かっても小屋に戻ってきてしまう。やがて3人が自分のいる場所が全く違う(ウィスコンシン、ニューハンプシャー、サウスダコタ)と主張することで関係もぎくしゃくしてくるのだが、銃声は聞こえるし、皆が自分が死ぬ夢を見るし、途方に暮れる3人であった。
ある日、近くの枯葉に埋もれた防空壕を発見するが、そこにある地図やワインなど、全てドイツ語だったのだ。父が同じく戦死したというサマンサとジョディ。父親がドイツ人であるというサマンサが第二次大戦の・・・などと言うものだから、3人の時代がそれぞれ違うことも発覚!場所だけでなく時代も違うとなれば『君の名は。』を思い起こすのですが、いったいどんな結末を迎えるのでしょう・・・とワクワク感が止まらない。
何度も聞こえた銃声はナチス兵のものだった。本人はナチス兵じゃない!ドイツ兵だと主張するところも可愛い。しかし、彼は乱暴者であり、3人をロープで縛り上げたりする。そして見つけたロケットペンダント。「どこで手に入れた?」とドイツ語でまくしたて、詰問するドイツ兵ハンス。あら私も持ってるわよ!あなたは?などと、ストーリーの核心部分が見えてくる。
4人がそれぞれ不幸な死に方をする物語。しかも、ハンスが曾祖父で、サマンサが祖母、ジョディが母親であるトム。うそだー!信じたくないと頭を抱えるクリント・イーストウッドの息子は悩む。それぞれ大戦中、1962年出産時、1985年死刑、2011年自殺という重いテーマではあるのだが、曾祖父が空爆から生き残りさえすれば幸せな暮らしができるんじゃないかという結論に達し、なんとかハンスを防空壕に導こうと頑張るのだが、いかんせんドイツ語がわかるのはサマンサだけ、しかも片言。ジョディの腕の傷が消えていくわよ!といったタイムパラドクスものの常套手段も使われ、親が死んだら消えてしまうという残酷さ。どうせ年末にはみんな死んでしまうんだから、未来のやり直しに賭けるという前向きな展開は評価できると思います。うーん、面白かった。ほんと拾い物。