つむぐもののレビュー・感想・評価
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光が綺麗な映画
話の流れは驚きも少なく、結末もなんとなくの予想はつくが、人物描写がリアルなので飽きさせない。
ヨナと剛生が通じ合うきっかけがもう少し描かれていても良かった。
涼香役、宇野役の演技が瑞々しくて良い。
キムコッピの笑顔がずっと観ていたい気持ちにさせる。
涼香のような一見良い子でも、突然現れて自分より上手く老人たちと心を通わせていくヨナに嫉妬し、上司に告げ口するというのが、完璧な良い子なんていないというリアルさがあり、更に最後にヨナに告白することでモヤモヤが残らず救われている。
ラストは冒頭と同じようにヨナが平凡な日々を過ごすシーンだが、その間に起きた日本での経験は少なからずヨナに影響を与えており、反射的に祖母に手を添える。
冒頭では店の手伝いもしなかったが、今度は軒先きに座ってみようとする。そんな自分に気付き、笑顔を見せて終わる。
今後のヨナがどうなっていくのかは想像の範疇であるが、経験は必ず変化をもたらすというリアルさを、よく描いた映画だと思う。
沈黙はかくも語りき
様々なメッセージを孕んだ作品だった。
観る人の人生や環境、今によって、残像が変わるのだとおもう。
異国間の確執
言葉の壁
目的がない故の迷走
学ぶという事
介護の側面とその歪み
伝統の継承と放棄
他人より遠い血縁
老い
環境がもたらすもの
誰しもに訪れる死
言葉では伝わらないもの
言葉だけでは伝えきれないもの
僕はこんなメッセージを読み取った。
数多のメッセージを雄弁に語る事が出来る、優れた設定とキャラクターであった。
それぞれに答えが用意されてるわけじゃない。でも、誰しもがどこかの何かに引っかかるのだと思う。
これらを語るのに膨大な台詞があるわけじゃなく、僕らは時折訪れる沈黙からそれらを読み取る。
その背中から心情を汲み取る。
そういう静かに訴えかけてくる映画であった。
季節は移り、日本に彼女は馴染んでいく。
そこに過ぎていく時間を感じ、紡がれていく人と人を感じる。
ラストカットは彼女のUPであった。
唐突に終わった感もあり、賞賛も応援もできなかった。
え?こんなラスト??と疑問にも感じたが、でもそれで良かったんだとジンワリ思う。
店の中から店先に出てきた彼女。
劇的な変化など現実には転がってはいない。
それでも、彼女がしてきた経験は緩やかに、確実に、彼女を変えていく。
そんなちっぽけな変化が重なって人は成長していくのだと。
だから、焦るな。答えを急ぐな。
そんな事をラストカットは語っていたのかもしれない。
時折、飛び出す石倉さんの関西弁が若干耳触りであった。
方言の方が、余計な詮索をせずに済んでたように思う。
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