写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のことのレビュー・感想・評価
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これからも生き続ける
作家は亡くなった。だが、この作家が見つけたことはこれからも残る。張り切らず、主張しすぎない生き方と表現の仕方◎アメリカのニューヨークに生まれた鴨長明◎
私の写真の狙いは、見る人の左耳をくすぐること
地階にて展覧会があり、彼の人柄を知ろうと鑑賞。原題「in no great hurry」。まさに生きることを急がない生き方。人と違うことを厭わない感性。「忘れられようと願っていたのに、重要でなくあろうと願った」一人暮らし。
自ら「墓場」のような部屋だと自嘲する。たしかにとっ散らかっているが、彼の生きてきた年月が折り重なっている。だから彼にとっては、そこにある無秩序に快感がともなうのだろう。
「幸福は馬鹿げた概念だ。幸福は人生にとって重要ではない。もっと他のなにかだ。」と言う。「心があるとは、辛いことだ。」とも言う。それは幸福を諦めた裏返しの捨て台詞とは思えなかった。老いぼれてはいるがみじめではなかった。
なお彼の写真は、誰の視界にも入っているごくありふれた世界。違うのは、その瞬間を切り取れるかどうか。人の賞賛を得ようと狙っていない。野心もない。作為的でもない。およそ世の中の写真家のようなせせこましさや神経質さがない。街歩きのついでに写真を撮る彼は、初めてカメラを持った爺さんが、無造作に目についたものを撮っている様にしか見えない。むしろ、だからこそ被写体である街の人々は無警戒で、素に近い表情を見せるのだろう。それもまた彼の魔術、か。
思わず引き止められる、写真の外に広がる世界を考えてしまう、なぜか胸...
思わず引き止められる、写真の外に広がる世界を考えてしまう、なぜか胸を打たれる、自分も同じように世界を見てみたいと感じる、そんな写真を撮るソールライターについて知りたくて見た作品。太陽が入る大きな窓がある部屋、散歩道や緑が多く、ご近所の人と気軽に話しができる家の周り、若い時にアメリカに渡ってきてから引っ越すことなく住んでいるという。彼がうつすのは、目の前にある美しさ。厳格なユダヤの家に生まれたソール、決められた自分の人生を捨て、彼が得たのは、獲得するということではない、きらびやかな成功ではない、ただ美を喜びとする生活。
猫が可愛い
写真家ソール・ライターのことは事前に知らなかったが十分に楽しめた。
ゆっくりと喋る独特な口調と自由に歩く猫。
大切にしている13のことを過去のこと現在のことを絡めて語るソール・ライター。
映画を見た後で彼のこれまでの人生について調べるとより面白く感じた。
窓辺に座る猫がとにかく可愛い。
意外とオシャレなドキュメンタリー
老人が静かに自由に生活しているのをかき乱す雰囲気は否めないが、それをも楽しもうとする擦れた写真家には大いに共感できた。
あまりにソール・ライターばかりのインタビューで展開されるためか、後半になるにつれてその語りに信憑性が持てず、退屈な印象を持ってしまった。とはいえ、日常の大半を近所の撮影に時間を費やす写真家の物語であるから、特別な出来事を盛り込むことが難しかったのだろう。
ソール・ライター写真そのものがカッコいいからなのか、映画も非常にオシャレな仕上がりになっていて、見やすいものであった。それ故にソール・ライター自身もこの映画を気に入ったのだと思う。
映画としては
この映画は、「急がない人生で見つけた13のこと」という題名に沿って、13の章で構成されている。
主に自宅で写真家ソール・ライターがインタビューに答えたり、何かモゾモゾしながら話している。時折挟み込まれる彼の撮った写真は息をのむほど素晴らしい。もっと見たい。猫も可愛い。チャーミングで、変わり者で、とてつもない絶望を抱えている人に見えた。とても魅力的な人物だ。
LUMIX片手に街をスナップする姿が印象的だった。気軽に写真を楽しんでいるようだった。それと、やはり猫だ。カメラを横切るふてぶてしい猫が、とてもよかった。
問題は、かなりおじいちゃんなので、話すのがとてもゆっくりだということ。
話している内容は面白いのだけど、ほぼ同じ部屋の中でのゆっくりとした語りを聴き観続けるのは、中々根気がいる。
8章くらいに「まだ5章もあるのか…」と少し辟易してしまった。
とても興味深い題材なのに、映画としていまいち面白く出来なかったことが、勿体無く思える作品だった。
監督が撮影中一番苦労したことは、性格の悪い猫にたくさん噛まれて傷だらけになったことだそうだ。たぶんいい人なのだろう。
「人が深刻に考えることの中にはそんなに重大でないことが多い」
10月にこの映画館で「Finding Vivian Maier」を観たが、今回もある写真家のドキュメンタリー。
翻訳が柴田元幸さんというのも、観たい理由の1つだった。
サブタイトルにもあるとおり、彼(ソール・ライター)は「急がない人生」。
表に立つことを避け、メディアとのかかわりも極力避け、自分の撮りたい写真を取り続けたという彼の生涯。 それは、この映画にたびたび出てくる買われている猫(かわいい!!)に似ている。
焦らず、マイペース。ファッション誌で活躍していたときも、基本的には同じスタンスだったのでしょう。
上映後、監督ご本人が登場。映画を制作するまで、制作後、そして写真家ソールがこの世を去るまでのエピソードについて語ってくれました。
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