劇場公開日 2016年5月14日

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「情けは人の為ならず」殿、利息でござる! みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5情けは人の為ならず

2022年11月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

タイトル、予告編から予想して、コメディ時代劇だと思って鑑賞したが、予想とは違い、非常にシリアスな心温まる作品であった。本作は、年貢と労役に苦しみ夜逃げ者が出る程に困窮した宿場町で、庶民のために、藩に金を貸して利息をとって庶民に還元しようという斬新な宿場町再生計画の実現を目指した、商人達の奮闘記である。

宿場町に住む、主人公である商人・穀田屋十三郎(阿部サダヲ)は、アイデアマンである菅原屋篤平治(瑛太)が考え出した宿場町再生計画に賛同し、出資者を募る。しかし、儲けのない話に乗る者は少なく、悪戦苦闘する主人公達(阿部サダ夫、瑛太、寺脇康文)が、面白可笑しく、極めて人間的に描かれている。史実に基づいているので、主人公達の説得で、当初は出資を渋っていた商人達が、徐々に無償の人助けに奔走するようになるプロセスが凄くリアルに感じられる。また主人公達を崇高な人間として美化せず、煩悩ありありの普通の人間として描いているので感情移入し易い。

当初は最も出資に非協力だと思われた商人・浅野屋甚大(妻夫木聡)が父親(山崎勉)の代から同じアイデアを思い付き、実現するために血の滲む思いで金をためていたというエピソードは、父親役の山崎勉の圧倒的存在感が奏功し、感動的である。

また、本作は、お金の話ばかりではなく、兄弟である、主人公と浅野屋(妻夫木聡)の確執と和解、主人公の父親(山崎努)への想いなど、主人公の兄弟、親子関係もしっかり描いているので、深みのある作品になっている。

艱難辛苦の末に、主人公達の計画はようやく実現する。ラストで、主人公達のその後が紹介され、今も現存する浅野屋と当時の当主(山崎勉)が映し出される。山崎勉の、達観した、慈愛に満ちた表情に心癒される。その時、真っ先に頭に思い浮かんだのは、情けは人の為ならずという諺(人助けは相手の為になるばかりではなく、最終的に当人に恩恵を与えるという意味)である。本作は、時代劇だが、現代人に多く見られる、自己中心的で、即物的な考え方への警鐘になっている。

冒頭にも書いたが、最近、作品内容と、タイトル、予告編内容が一致しない作品が多い。ネタバレはマズイが、適切な作品選択ができなくなるので、作品内容と一致したタイトル、予告編にして欲しい。本作も、タイトル、予告編を見てスルーした人はかなりいると思うと、良い作品だけに、勿体ない限りである。

みかずき
気ままなおさるさんのコメント
2022年11月13日

同感です。予告編と内容が繋がらないもの多いですよね…

気ままなおさる