「大は小をあんまり兼ねない」インデペンデンス・デイ リサージェンス 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
大は小をあんまり兼ねない
SF超大作『インデペンデンスデイ』の、20年振りの続編が登場。
僕も中学の頃に観て熱狂したひとりで、「これを越える
SF映画は無いぜッ!」くらいに当時は思っていた。
まあ歳を経るごとにそのノー天気過ぎるアメリカ万歳
ぶりや人物造形に若干辟易するようにはなったものの、
エンタメSF超大作として 未だに忘れ難い映画ではある。
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本作の見所はなんと言ってもド派手さ極まる破壊・戦闘シーンだ。
前作に引き続きメガホンを取ったローランド・
エメリッヒ監督だが、今回も“破壊王”の面目躍如。
今年になって公開された作品の中でも、
映像的なスケールと派手さなら本作は随一!
特に、満を持して敵の巨大宇宙船が登場するシーンは
スケール大きすぎてよく分かりませぬ。なんせ今回の
敵船の直径は4800km!(地球の外周の約1/8)。
移動するだけで国ひとつ消滅するレベルの大破壊が
繰り広げられるブッ飛んだスケール感は凄まじく、
ロンドンブリッジやビッグベンがドバイのブルジュ・
ハリファと衝突するわ、脚を出して着陸するだけで
アメリカ東海岸が壊滅するわ、文章を書いてる自分でも
ピンと来ないレベルの異常事態が起こるんである。
破壊シーンはもちろんのことアクションシーンも盛り沢山で、
前作のような大規模ドッグファイトは勿論、前作には
無かったエイリアンとの白兵戦も少々、さらには
怪獣映画みたいな見せ場まで用意されているので、
シンプルにド派手なエンタメを観たい!という方にはもってこい。
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しかしながら、ここからが不満点。
まず、中学生の頃に初めて『インデペンデンス
デイ』を観た時ほどの興奮は覚えなかった。
理由はざっと3つだが、『単純に楽しめれば良い!』
という方は、ここからは読み飛ばしちゃってくださいな。
まず、破壊の規模がデカすぎてとピンと来ないというのも
あるが、何よりもアクション演出における“タメ”が不足。
じわじわ盛り上げて一気呵成にホワイトハウスや
エンパイアステートビルを破壊するシーンの衝撃、
意外なキャラが一気に劣勢を覆す逆転の興奮。
本作にはそんな“タメ”が圧倒的に不足している。
今回は超巨大な敵船ひとつが登場するものの、敵船が
世界各地に分散していた前作の方が状況が絶望的に
思えたのも、“逆転”感を感じにくかった要因だろう。
次にキャラクター描写。
キャラクターひとりひとりに戦うべき背景があるが、
主要キャラが多過ぎて各人のドラマの掘り下げは前作以上に浅い。
そもそも上映時間は前作より25分も短いというのに。元大統領のあのシーンなんて、演出の“タメ”と
人物描写の不足で最も割を食った感がある。
あそこはもっと盛り上がって良かったハズ。
そして、単純過ぎるシナリオ。
丸いアイツの出現のお陰で前作以上に荒唐無稽な話
になりつつある訳だが、それ以上に『司令塔を潰せば攻撃
の手を止める』という、20年前と同じ流れに違和感。
2001年以降の世界は、無数の武装勢力が、あるいは
一個人が大規模なテロを起こす時代となってしまった。
彼らは明確なリーダーではなく、自らの思想に従って動く。
最早、『悪い奴らのトップを潰せば問題解決』なんて
単純明快な解決策がまかり通ると思われていた時代ではない。
(きっと昔からそうだったのだろうけど、
それを思い知らされたのはここ数年だろう)
その気持ちがカタルシスにブレーキをかけるのである。
まああとは、『トランスフォーマー:ロストエイジ』と
同じくらいに中国押しのシーンも多いので、
人によってはそこをメタメタに書く人がいそう。
そこは商売だと割り切ればいいと思うけどねえ。
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もともと前後編の噂があった本作。
実際キレイな締め方をしつつも続編を匂わせて終わるが、
本国の方では思った以上にヒットしていないようだし、
果たして続編が作られるのかどうか。
これだけド派手な映像を観せてくれるのだから
損した気分にはならないし、上記の不満点なんて
気にせずとにかく大スケールの映画が観たい方は
十分楽しめるだろう。だが、この夏唯一無二の
選択肢かと問われると、ちょっと唸ってしまう出来。
<2016.07.08鑑賞>