劇場公開日 2016年4月29日

「「下の句」では、新田真剣佑という俳優が誕生した一部始終を目撃できる!」ちはやふる 下の句 細野真宏さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0「下の句」では、新田真剣佑という俳優が誕生した一部始終を目撃できる!

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

映画「ちはやふる」は、まず「上の句」と「下の句」の前後編という形で2016年3月19日、4月29日と連続公開されましたが、2作品の出来があまりに良かったので、「下の句」の公開初日の舞台挨拶の際に急きょ最終章「結び」も作られることになったとサプライズ発表され、出演者も驚く展開になりました。
当初は、小泉徳宏監督は「上の句」と「下の句」で全てをまとめ上げるように全力疾走していたようですが、いま改めて見てみると、確かに物語りが壮大なので、「上の句」と「下の句」だけで終わらせると、描き切れていないものも少なくなく、最終章「結び」を作る決定をしたのは正解だったと思います。
例えば、「上の句」では、千早(広瀬すず)を中心とした「かるた部」がどのように作られ結束していくのかにストーリーの大部分が割かれていて、幼少期に始まった千早(ちはや)と太一(たいち)と新(あらた)の3人の関係の話が少なくて、ようやく「下の句」では、そちらにも比重が割かれています。
ただ、「下の句」では近江神宮での「全国大会」(野球で言えば甲子園)も描かなければならず、結局、メインキャストの新(真剣佑)の戦いをキチンと描けていない状態で終わったりしていました。
この「ちはやふる」という作品は、本当にキャラクターがしっかりと描かれているので、私は他の映画でも「あ、肉まんくんだ」とか、未だに「ちはやふる」でのあだ名で認識しています。
象徴的なのは、福井訛りのある素朴で大人しいキャラクターの「新」(真剣佑)で、真剣佑は本作で演じた「綿谷新(わたやあらた)」という役名から苗字をもらい、2018年に公開された「結び」の段階では“新田真剣佑”という現在の名前に改名しているなど、彼の役者としての原点となる作品にもなっているのです。特に本作「下の句」では多く登場し、なかなか人間味のある素朴で上手い演技をこなしています。
エンディング曲は「上の句」と同様にPerfumeの「FLASH」だったのも、この2作はセットだったのでアリだと思います。
「下の句」の興行収入は12億2000万円と下がってしまったのは仕方ないですが(連続公開で前編を見ないで後編だけを見る人は稀なので)、「上の句」とのセットでは合格点ですね。

細野真宏