劇場公開日 2016年3月5日

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セーラー服と機関銃 卒業 : インタビュー

2016年3月3日更新
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橋本環奈、ひたむきだからこそ想像のつかない未来予想図

映画ヒロインの“大名跡”を継承する覚悟。橋本環奈はその重圧と闘いながら、「セーラー服と機関銃 卒業」で女優としての本格的な一歩を踏み出した。ひたむきに役と向き合い、がむしゃらに駆け抜けた16歳の夏は、橋本ならではの目高組4代目組長・星泉として結実。その先には、本人でさえも想像のつかない未来予想図を描いている。(取材・文/鈴木元)

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「快感」の決めゼリフで知られ、薬師丸ひろ子の人気を不動のものにした「セーラー服と機関銃」から35年。角川映画40周年記念作品の第1弾、原作の赤川次郎も作家生活40年と、さまざまな節目が積み重ねられた映画初主演。橋本には驚き、喜び、期待とともに当然プレッシャーものしかかってくる。

「すごくメモリアルな作品で、薬師丸ひろ子さんがやられていたことももちろん知っていました。その後を描くということで、うれしかったしワクワクしましたね。父が薬師丸さんのファンだったので、とても喜んでくれました(笑)。同時に言葉では表せないくらいのプレッシャーもありましたし、撮影が近づくにつれて日に日に増していく感じでしたけれど、それを封印しないといけないと思っていました」

亡き伯父から目高組を引き継ぎ、敵対組織に乗り込み敵をとった星泉。その後、組を解散させ普通の高校生活を送っていたが、都市開発を隠れみのに街を乗っ取ろうとする堀内組に怒りが再燃し、組を復活させる決意をする。クランクイン前の約2カ月、前田弘二監督の下で、目高組員役の大野拓朗と宇野祥平も加わっての徹底的なリハーサルが行われた。

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「役づくりは、リハーサルが一番の主になりました。本当にたくさんのことに挑戦できたのは良かったと思います。今思えば、180度逆のことをやっていたんじゃないかと思うくらい、いろいろなパターンを試しましたし、いろんな案が出て私から監督にこう思うという話し合いもしました。それらが混ざり合って、目高組がつくれたのは大きかったと思います。リハーサルで一切やらなかったことを、本番でいきなりアドリブでやったこともありましたね」

いざ撮影がスタートすれば、腹をくくるしかない。しかも、首を絞められて宙づりにされたり、爆破に巻き込まれたりと体力的にもハードなシーンも盛り込まれている。

「はじめてのことも多く大変だったんですけれど、大変なシーンの方が逆にナチュラルハイになって、テンションが高かったんですよ。1シーン1シーン、緊張していたと思いますけれど、撮影に入ってしまえば代わる人はいないわけですから、そんなこと考えてもしようがないよなと鼓舞しました。プレッシャーはありつつもだんだん薄れていったんじゃないかと思います」

前田監督をはじめ若頭役の武田鉄矢ら共演者、スタッフがさまざまなアドバイスを送り組長をサポート。その気遣いは、全員が「組長」と呼んでいたところにもうかがえる。

「最初は慣れないなって思っていたんですけれどね。リハーサルではちょっと恥ずかしい気持ちになりましたけれど、全然ですね。慣れるもんだなあって。快感? ありましたね(笑)」

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ロケ地の群馬・高崎の酷暑は応えたようだが、約1カ月、現地に滞在したことで集中力を保てたともいう。そして、機関銃をぶっ放すクライマックス。なかなかOKが出ず悩んでいたところに、武田の「好きにやっていいんだよ」の一言。気持ちが楽になるとともに、演技の奥深さを実感した瞬間だ。

「自分たちが考えていることすべてが正解でもあるし間違っているとも思うし、奥深すぎて何が答えか分からない。自分が想像できないことの方がたくさんあるし、演じていくことでいろいろと見つけていきたい気持ちが出てきて興味がわきました。もっと、もっとって」

そうは言うものの、クライマックスでは間違いなく橋本環奈としての星泉がきつ立していた。啖呵(たんか)は切るものの、どこか迷いが見え隠れする微妙な感情の機微を表現できたことに、本人もちょっぴり自負をのぞかせる。

「自分らしい星泉をつくるというのは有言実行できたのかな……。明確にこれというものは思いつかないんですけれど、泉の根底にある強さや堂々としたところ…。象徴的なのは、(堀内組に)乗り込んで機関銃を撃った後に、泉の中でもかっとうがあって、でも『こんなの気に入らない。絶対気に入らない』ってもう1回撃とうとする。それはこの映画だけの星泉なのかなって思いましたね。(堀内組の)安井さんに、自分が好きなようにやっているだけじゃないかと言われると分からなくなるけれど、伯父さんが残した街を悪から守りたい一心だったと思うんです。それが自分らしさ、自分らしい星泉につながったんだと思いますね」

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自ら成長を言葉にすることは難しいが、クランクアップ直後、有人たちの反応から感じ取れることがあったという。

「周りからは、すごく変わったと言われて少しは変わったのかなあって。ズバズバものを言うとか、目がきついとか……。多分その頃は泉っぽかったんじゃないかと思いますね(笑)」

橋本にとってメモリアルになる作品になることは誰もが認めるところだが、高校を卒業する泉に対し、4月から高校3年生になる橋本は女優としては“新入生”だ。その他の活動も含め多忙な日々は変わりないが、女優業にもますますどん欲になったことは明らかだ。

「この映画を機に女優としての第一歩を踏ませていただいたという気持ちはすごく強い。だからこそ、まだ見たことのない自分の一面を見たいし、いろいろな役に挑戦したいんです。私は死ぬまでこの仕事をしていたい気持ちが強くて、誰も想像できないような私の未来が築き上げられていければいいなと思っています。皆の期待をいい意味で裏切るような。だから今は正直、具体的な未来は描けていないし、描かないようにしておきます」

適切な言葉を探しながら、一生懸命自らの思いを伝えようとする真摯な姿は実にすがすがしい。固い信念を貫いた泉にも通じるものを感じた。“卒業”のないこの世界で、橋本がどのような未来を切り開いていくのか、どうしても想像してしまいそうだ。

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