「素人にはマーベルと区別がつかない!」ワンダーウーマン 曽羅密さんの映画レビュー(感想・評価)
素人にはマーベルと区別がつかない!
マーヴェルのアベンジャーズシリーズの向こうを張るDCジャスティス・リーグシリーズの一エピソードである。
アベンジャーズの成功が一つのビジネスモデルとして確立したので、今後柳の下のどじょうはさらに何匹も増えそうだ。
ゴジラもシリーズ化されるそうだし、最近公開されたトム・クルーズ主演の『ザ・マミー』も「ダーク・ユニバース」というシリーズになるらしい。
フランケンシュタイン、ドラキュラ、狼男、ジキル博士がいっしょに活躍する?らしい。
トム・クルーズ以外ではジョニー・デップ、ハビエル・バルデム、ラッセル・クロウといった豪華メンバーが既に公表されているが、筆者は世代的にこの手の怪物ものというと藤子不二雄Aの『怪物くん』を想像してしまう。
同時期上映の『スパイダーマン ホーム・カミング』はアベンジャーズシリーズの一つとして随所にその設定がもり込まれているが、本作も本編の出だしと最後にさりげなくジャスティス・リーグの一つである描写がされる。
あえて苦言を呈するなら、最近のアベンジャーズシリーズはそのもり込み方がうるさすぎる。
全作品を観ていないと理解できないかのような制作方法は巨大資本を背景にした傲慢にしか映らない。
映画の冒頭で『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』を観ていないとわからないシーンが入るが、もはや引用している作品の主要キャラクターは本作にさんざん登場するアイアンマンですらない。
金儲け臭がプンプンで、映画単体として楽しめない域にまで達している。
ワンダーウーマン自体は『バットマンVSスーパーマン』ですでに登場しているのだが、本作はその前日潭に当たるため何ら問題なく本作だけで物語を楽しむことができる。
しかしこのシリーズも回を重ねていけばアベンジャーズのようになる可能性は十分にあるので観客として注意は必要である。
既に続編制作が決定しているらしいが、本作の続きとして観に行ったら『ジャスティス・リーグ』(今年公開)を観ていないとわからないシーンが登場するなどざらにありそうだ。
主演のガル・ガドットの見事な美貌に魅入られずにはいられないし、アクションシーンにおけるCGは相変わらずのハリウッド品質で文句の付けようがない。
がしかし、話の展開は単純で黒幕と思っていた敵が違った時点で真の黒幕は察しがつくし、ワンダーウーマンの出自も大体わかってしまう。
アベンジャーズシリーズを見慣れてしまっているせいか、まったく真新しさがない。
中には本作がアベンジャーズシリーズの一つだと勘違いする人もいるのではないだろうか。
そのうちDCもマーベルも大同団結して一つになるなんてこともあるかもしれない。
第二次大戦を舞台にした映画の悪役はナチスとだいたい相場が決まっているが、使い古されたこともあってか本作の敵は第一次大戦時のドイツである。
両大戦ともに敗戦国となったドイツはいつまで経っても悪役にされてしまうのかと少々同情してしまう。
戦争に敗れるとはこういうことなのかもしれない。この手のたかが娯楽作品でも悪役にされてしまう。
もっとも毒ガスを開発したりユダヤ人虐殺など科学技術も進んだ強大かつ邪悪な敵として設定するのに申し分ないからではあるだろう。
この手の作品に深みを期待するのがそもそも間違っていると言われればそれまでだが、やはり同じDC作品でもクリストファー・ノーラン版バットマンである『ダークナイト』は素晴らしかった。
実はDCコミックのジャスティス・リーグものには『キングダム・カム』という大傑作がある。
スーパーマンが引退した世界で新世代の能力者たちが自分たちの特殊能力を鼻にかけて暴れ回る。スーパーマンやワンダーウーマンなど往年のヒーロー達が復活してジャスティス・リーグを結成して事態の収拾をはかるが、バットマンはそれに反対してジャスティス・リーグVSバットマン陣営という様相を呈していくという内容である。
内容的には『シビル・ウォー』のDC版になるが、筆者は『シビルウォー』公開の数年前にこの作品を読んでいたので当時はかなりな衝撃を受けた。
いずれは『キングダム・カム』が制作されるのであれば、これからのジャスティス・リーグのシリーズ展開に期待したいところだ。とはいえヒーロー対ヒーローの図式はすでに『シビル・ウォー』で提示済みなので二番煎じになる虞れは多分にある。
いずれにしろヒーローが集まって何かするのは結局のところシリーズとして似たような展開になるだろう。
ただこのシリーズ化の流行はヒーローの枠を越えて当面おさまりそうにない。
ヒーロー2つに、怪獣、怪物、次はどんなシリーズがくるのか?