劇場公開日 2017年8月25日

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「クライマックスが…」ワンダーウーマン Toshiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0クライマックスが…

2017年8月28日
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鑑賞方法:映画館

開巻の騎馬対ライフルの戦闘シーンで今年の傑作と確信した。アマゾン族の戦士が操る馬蹄の轟き。三本の矢を一度に放つシーンは日本の戦国モノでもあまり見たことがない迫力。アクション映画のツボを外していない。
ロンドンへ渡ったダイアナの件も快調。古くからある異文化体験物語だからお手本はいくらもあるだろうが20世紀初頭のロンドンの風俗が観客にも楽しいし、ダイアナが圧倒的にチャーミングだ。
戦場へ行ったダイアナが前線で孤立している村を救うため単身敵陣へ乗り込んでいくところが前半の山場。ここは無類のカッコよさ。鳥肌もの。ダイアナが完全な正義を信じている無垢のヒーローだからだ。この感覚は最初にウルトラマンがテレビ画面に現れて当時の少年たちに与えた感覚と同じだろう。完全無垢な正義のヒーロー。倒すべき絶対悪がいる世界。しかしこの世にダイアナが信じる絶対悪は存在するのか?そのダイアナの葛藤がこの映画のキモだ。しかし映画のクライマックスは…
DCだし、ヒーローものだから、明確な敵キャラが必要なのは仕方がないのだろうが、アレじゃ納得できないな。ビジュアル的にも。
ウルトラマンも後半以降はたとえ怪獣相手でも正義とは何だ?と問いかけた。それが名作たる所以だ。ダイアナは人間世界が相手だからより悩みが深いはずなのに唐突なあのクライマックス。無理やり落ちを付けたよう。このシーンのダイアナはマンガそのもので失笑。スペシュウム光線?まで出すし。
DC初の女性ヒーローに期待したが、私にはヒーローものの本質である戦う意味という問いをラストで放り出してしまっているようにみえる。この一点でのみこの作品を将来に亘っての傑作と呼びにくい。ダイアナがこの戦いで多くを学び、正義にも悪にも絶対はないことを識ることが示されて映画は終わるが、敵キャラは絶対悪として観客の前にいた。この矛盾がどうにも整理できない。DCの限界か。
高評価は前半の息を呑む素晴らしさとダイアナの魅力。少なくとも無垢なプリンセス、ダイアナの意思と行動を否定できないからだ。

Toshi