「欠点は沢山ある。それでも素晴らしい映画だと断言したって構わない!」ワンダーウーマン 平田 一さんの映画レビュー(感想・評価)
欠点は沢山ある。それでも素晴らしい映画だと断言したって構わない!
悪役アレスの意外性とインパクトが足りないし、演じるデヴィッド・シューリスにも正直僕は不満だった。要はスピルバーグが撮った『戦火の馬』の憎まれキャラ・ライアンズの延長だから、二面性のあるアレスを演じても驚けなかった(『ローグ・ワン』のメンデルゾーンか、『ダンケルク』のライアンスに是非演じてほしかった)。それにDCEU映画2本目の『バットマン VS スーパーマン』よりスケールがちょっと小さく感じる場面が見受けられて、もうちょっと遠近法にこだわりが欲しかった。せっかく舞台が興味深い第一次世界大戦下なのに…。クライマックスのダイアナ対アレスのバトルも頑張ってるけど、単調性を少し抱いてしまったのも確かだった。だから世間が感じるよりも、”あと少し”とこの場を借りてどうしても伝えたかった。
ただそれでも高評価にしてる理由は断言するが、その欠点を凌駕するほど映画がホントに素晴らしかった!ガル・ガドットのダイアナは間違いなくパーフェクトで、今年のアカデミー賞の候補に上がるか今からワクワクです!クリス・パインのスティーブ・トレバーも久しくお目にかかれなかったクラシカルな雰囲気が似合う正統派ヒーローで、ぶっちゃけハン・ソロを思い出す瞬間が何度もあった。あとユエン・ブレムナーが『トレインスポッティング』や『AVP』以来というべき、実に生き生きした芝居を見せてくれて嬉しかった。ブレムナーとシューリスって最近役が固定気味な印象が多かったけど、ここで先にブレムナーが殻を破ったようでワクワク。敵サイドのエレナ・アナヤもすごく印象的だった(未見だけどアルモドバルの『私が、生きる肌』を少し思い出すマスクだった)。
でも一番素晴らしいのは監督のきめ細やかさが光っている場面だった。無人地帯(ノーマンズランド)でダイアナが戦火を颯爽と駆ける場面は、過去に一度も観た事がない名シーンだと断言できるし、スティーブがダイアナへ最後に伝えた“愛してる”や終戦後のイギリスで貼られるモノクロ写真のスティーブ、あそこで僕は何度も何度も泣いて泣いて泣きまくった。多分あんなに泣いたのは『聲の形』『T2』や『アルマゲドン』のクライマックス、『グリーンマイル』のコーフィーとジョンの別れのシーン以来だった。そして本編終了後のエンドクレジット・テーマソングは、必死に拍手を我慢するほど圧倒的にカッコ良くて、オールナイトが終わった途端の外の朝日が綺麗だった。もう本編と現実がリンクした瞬間だったし。
長々と書き殴ったが、欠点はたくさんある。でもそれを込みにしても大好きな映画だった。Blu-ray、『ジャスティス・リーグ』に『2』も今から楽しみだし、またもや先鋭的傑作を作ったワーナー/DCに感謝!一度は観ないと後悔するよ!