「泣けるけれど、やり過ぎ感」湯を沸かすほどの熱い愛 parsifalさんの映画レビュー(感想・評価)
泣けるけれど、やり過ぎ感
実話に基づいていないオリジナル作品。「万引き家族」と似ているなあって思った。妻の双葉と夫の一浩は、本当の夫婦関係だけれど、夫が失踪していた設定。娘の安澄は夫の元妻の連れ子、夫が失踪中に面倒見ていた鮎子は、夫と血がつながっているかもわからない。つまり、母と娘二人は血が繋がっていない。双葉自体が、実の母に捨てられた育ちだったが故に、家族と子どもたちには愛情を注いでいるということか。双葉の愛の原動力は、愛に飢えていたからなのだろう。ヒッチハイクの松坂桃李含め、訳アリを克服することで、血が繋がっていない者同士でも、家族のような濃い関係になれるっていうのがテーマか。逆に家族という関係に甘えてはいけないよってメッセージ性を感じる。
家族を新たに迎えるシーンでは、しゃぶしゃぶを皆で囲むのは、幸野家の儀式に見えた。新婚旅行でエジプト旅行をする約束は、みんなで組体操のピラミッドを作ること、銭湯を改修するという約束は銭湯の風呂場を葬儀場にして花で飾ることで回収されている。
宮沢りえと杉咲花は熱演。子役鮎子の伊東蒼が子どもらしく表情豊かになっていく様、オダギリジョーのタメ夫ぶりも良かった。
安澄の実の母に会いに行くところでの手話を習わせていた理由がわかるシーンが、一番の泣かせどころであった。
娘の安澄のいじめの解決する際の下着になるシーン、鮎子の誕生日に母が迎えに来るかと思い、待ちぼうけを食って、双葉らと抱き合って失禁するシーンなど、自分の裸を晒すっていうのは、かなり攻めた脚本だった。(クラスメイトの前で下着になるって、さすがにない)ヒッチハイクの松坂が、ラブホテルに連れていかれたシーンも然り。裸の付き合いをするための儀式という狙いなのだろうが、他の方法はないのか。また、最後の葬儀は、家族だけという設定にし、霊柩車で遺体を運んだふりをし、実際は銭湯の風呂焚き場で火葬して、皆で一緒に風呂に入るっていうのは、さすがにどうかと。双葉自体の愛の熱さと題名を回収するためとは思うが、やりすぎの感があって、本当に?と思ってしまった。
骨子となるストーリーと俳優陣の熱演で、感動できる作品に仕上がっているが、攻めた脚本の部分部分が過激すぎて、(狙いはわかるが)しっくりしない感じが残った。