「わからん」湯を沸かすほどの熱い愛 美咲さんの映画レビュー(感想・評価)
わからん
いい映画だと思うし、思いたいんですが、正直だいぶ違和感があって、でもそれ込み込みで、やっぱいい映画だったのかもしれないです。でも、やっぱりちょっとよくわかんないです。
他の人のレビューを読んで、違和感が私だけじゃなかったんだ〜と思いました。
安澄が教室で下着姿になるところ、鮎子が失禁したあとパンツをドアノブに引っ掛けるところ、拓海くんのラブホエピソード。
ちなみに私が感じたのは描写の性的な気持ち悪さというよりも、どちらかというと、この展開がべつに愛と正義に繋がらへんよな?という不可解さ。
私がもしいじめっ子だったら、あんなことされて怖くてもっとハブるし(笑)、
私がお姉ちゃんだったら、失禁して恥ずかしい気持ちの妹のパンツをドアノブにかけたりしないし(鮎子は嫌じゃなかったんか?)、
拓海くんとのシーンは単純に少なすぎてそこまでの距離の縮め方に観てるほうは追いつかなかった(嘘がバレたときの拓海くんの顔まじで犯罪者フラグくらい怖いからマジ見て)。
でも最後、お母ちゃんで湯を沸かして赤い煙が出て、キノコ帝国じゃないですか、めっちゃ衝撃的なラストですよね。
そしたらちょっとだけこの違和感にも合点がいくんです。
ただ泣かせるヒューマンドラマだと思って観ていたんですけど、実はこの映画はかなり挑戦的な、我々の価値観をぶん殴るような『愛の形』を提示したのかもしれないです。
正直、お母ちゃんで湯を沸かすって、え!?と思いましたよ、でも、それが故人への尊敬がないとか書いてる人もおるんですけど、その行為自体に尊敬がないかどうかって、べつに誰も決められないですよね(宗教のことはよく知らないし、関係ないので置いといて)。
他のシーンに性的な意図があるっていうのも、そう受け取る人にとってはそうなんでしょうけど、発信する側にそういう意図があるなんて決めつけられないし。
たしかによく考えたら、いじめから逃げるなってむりやり布団から引き剥がしたり、いきなりレジの店員の顔引っ叩いたり、戸惑う娘を車から引きずり下ろしたり、全部たしかに理由はあるんですけど、なんか変なんですよ。私たちに共感させないんですよ。
極め付けはお母ちゃんも実は捨てられた身だったという、あまりにも出来すぎたオチで、これが、全部まあるく収まる共感しまくりのお涙ホッコリ展開で進んでたら、相当こすられまくったありがち脚本になっちゃいますよね。
映像内の至る所で、色々と『あえて』なのかな、と思わせるような『切実さ』が、俳優陣の演技も含めて、垣間見えたんです。
そういう意味では、自分の持っていない感受性について考えるきっかけになったので、いい映画だなと思いました。
でも人にはなかなか勧めづらいです。